2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520190
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
白井 伊津子 淑徳大学, 社会福祉学部, 准教授 (40323224)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 萬葉集 / 修辞 / 譬喩 / 詠物詩 |
Research Abstract |
修辞表現について、とりわけ中国古典文学における譬喩表現と日本古典文学の譬喩表現を比較検討し、中国文学の受容のあり方、および日本古典文学における譬喩表現の独自性を明らかにすべく、平成22年度より「譬喩表現比較の基礎資料」の作成に着手し、上代文学にかかわる主要な作品の分析をすすめてきたが、本年度は最終年度となるため、主にその資料の整備を行った。さらに例を網羅し、資料としての充実をはかるべきであるが、比較の目安となる規準を立てることができた点は意義深いと考える。 同時に、当該研究の中心となる、譬喩表現受容の実態の解明において、もっとも微妙な問題をはらむ、『萬葉集』の巻八と巻十および巻七と巻九の、譬喩表現にかかわる歌について、巻十一、巻十二の序歌との関係を踏まえつつ検討を加えた。すでに、大伴家持の詠物歌や『萬葉集』の巻八の「雑歌」に収められる歌については、中国の詠物詩の影響が論証されてきたが、艶情との合体、「物」への感情移入ないし擬人法的表現などは、譬喩表現の方法に深くかかわるものである。そうした詠物詩の方法が、巻十の「詠物」の歌のみならず、「寄物」の歌にも見出しうることを確認しえた。そして、このことが、序歌をひとつの方法として展開してきた『萬葉集』の歌の、あらたな譬喩の表現方法の獲得であることを強調しておきたい。すなわち、『萬葉集』の相聞の歌を通時的にみたばあい、それまでの序歌、寓喩に加え、萬葉後期に至って、詠物詩を踏まえた詠物の歌の方法が、譬喩の方法として取り込まれていること、なおかつ、それが、『萬葉集』の編纂においても、巻十の「詠物」「寄物」に反映していることである。それらはとりもなおさず上代びとの譬喩意識の現れと捉えてよいだろう。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)