2012 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀アメリカ文学における進歩のデザインと破局の表象に関する文化史的研究
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22520241
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 克昭 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (10182908)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 進歩 / 破局 / ドン・デリーロ / スーザン・ソンタグ / アメリカ文学 |
Research Abstract |
本年度は、これまで遂行してきた本研究の論考を踏まえ、以下の二本の論文を執筆した。 (1)「噴火・蒐集・生成―『火山の恋人』における歴史の創造/想像(ポイエーシス)」、『災害の物語学』、中良子編、世界思想社、本年度刊行予定。 (2)「シネマの旅路の果て―ドン・デリーロの「もの食わぬ人」における「時間イメージ」」、『アメリカン・ロード―クロスメディアの文化学』、花岡秀、塚田幸光編、英宝社、本年度刊行予定。 (1)においては、自然の征服により文明を築いてきたアメリカにおいて自然が暴力的な相貌を帯び、カタストロフィとしてアメリカ的想像力を脅かすとき、それらを馴致すべくいかなる言説化が行われたか、スーザン・ソンタグの『火山の恋人』(1992)の分析を行った。本論文においては、ヴェスヴィオ火山の噴火が、十八世紀の合理主義的な「進歩のデザイン」と「破局の表象」としてのフランス革命と、いかなる関係を織りなしているかを考察した。 (2)においては、アウトサイドへの誘惑と疾走に特徴づけられるアメリカン・ロードをめぐる想像力が、メディアといかにインタラクティヴに共振するかという視座を逆転し、最近のデリーロ文学を特徴づけるスロー・スピードが提示する問題系を本研究の文脈において分析した。本論文では『ポイント・オメガ』(2010)の二つの外枠物語を手掛かりに、デリーロの短編「もの食わぬ人」(2011)をシネマ・ロード・ナラティヴとして読み直し、シネマに秘められた生成変化の開かれた時間相を明らかにした。その過程において、アメリカ文学における「破局の表象」と「進歩のデザイン」という本研究の二つのテーマの錯綜した関係を解きほぐすには、「時間の蝶番を外す時間」、すなわち非人称的な「時間イメージ」の解明が大きな役割を果たすことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通り、年次計画を遂行することができ、3年次終了の現時点において、全体計画の四分の三は概ね達成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はその目標を達成するために、毎年度、先行研究の整理と分析の枠組みの検討を行いつつ、次のような4つの大きな柱を設定し、以下の手順で研究活動を実施する。I.4つの時代区分における進歩と破局のヴィジョンに関する各種メディアの表象分析。II.Iの各時期に出版もしくは舞台設定されたフィクションが描く進歩と破局の表象に関する比較分析。III. メディア、デザイン、視覚アート、映像など、特定の表象媒体に焦点を絞り、共時的観点より進歩と破局の表象の相関性を考察。IV.図書館、資料館、博物館、美術館等における関係資料の発掘、収集。なお、年度毎に上記の領域における進捗状況を的確に把握し、研究が計画通りに進まないときは、分析対象とする作家、メディアをさらに絞り込むなど、適宜柔軟に組み替えを行い、研究期間中に必ず一定の成果が得られるよう調整をはかる。
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Research Products
(2 results)