2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジョージ・バーミンガムと北アイルランド小説の新たな展開に関する研究
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22520288
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
八幡 雅彦 別府大学短期大学部, 教授 (50166568)
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Keywords | 北アイルランド小説 / 融和 / ユーモア / ベルファスト / プロテスタント / カトリック / ナショナリスト / ユニオニスト |
Research Abstract |
平成23年の8月18日(木)から27日(土)にかけて北アイルランド公文書館、ベルファスト中央図書館、トリニティ・カレッジ図書館においてバーミンガム関連の文献を中心に研究調査、資料収集に当たった。ベルファスト中央図書館にはバーミンガムと同時代を生きた小説家リン・C・ドイルの書簡・草稿・新聞記事等を集めたアーカイブがあることを知り、その調査研究を行った。ドイルもまた、バーミンガム同様、過小な評価しか受けていない作家だが、このアーカイブの存在は、今後彼の小説を研究しその価値を明らかにしてゆく上で大きな手助けとなる。トリニティ・カレッジ図書館では、長年探し求めていたテレーズ・ロウによるバーミンガムに関する博士論文に巡り合えた。今回はざっと目を通しただけだが、次年度以降、バーミンガムの研究を続けてゆく上で貴重な文献になるものと思われる。またバーミンガムの未発表の演劇で1930年代に書かれたParnellの原稿を読むことができた。この時期バーミンガムはもっぱらユーモア小説を発表し続けていたが、この演劇はバーミンガムの初期の深刻な政治小説を思い起こさせる作品で、彼は常にアイルランドのことを憂い、真に人々の融和を願っていたことを再認識した。 12月にはウェストポート歴史協会の学術誌にバーミンガムの演劇General John Regan(1913)に関する論文を発表し、彼は真に世界の人々の融和を願っていたことを解明した。 北アイルランド小説の新たな展開に関しては、現代女性作家シャロン・オウエンスを取り上げた。彼女は紛争以外の通常の人間生活をテーマとする作品を書き続け、北アイルランドの普遍性を訴えている。 12月の日本アイルランド協会年次大会でオウエンスの作品に関する研究発表すると同時に、平成24年2月には短期大学部紀要に論文を発表し、彼女の作品の意義と価値を強調した。 新たな研究への足がかりをつかむことができた貴重な1年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度までは予定通り国外における調査研究、資料集を行うことができた。また1年に1回の学会発表、1年に1編の論文発表という目標もこなし続けている。バーミンガムは約90冊の著書を残しており、それらの著書を読みこなすのにやや予定以上の時間がかかっているが、彼の作品を読み、トリニティ・カレッジ・ダブリン図書館等で研究調査、資料収集に当たることにより毎年新たな研究材料が見つかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
トリニティ・カレッジ・ダブリン図書館でバーミンガムの書簡の調査研究に当たっていると、彼はアイルランドの歴史を動かしかねない作家であったことが感じられる。当時の歴史的出来事とバーミンガムの作品・書簡を照らし合わせながらそのことについて実証する。またバーミンガムはW.B.イエイツ、グレアム・グリーンといったノーベル賞作家にも影響を与えた。どのような影響かを解明する。北アイルランド小説の新たな展開に関しては、グレン・パタソンやシャロン・オウエンスが、紛争以外の北アイルランドの新局面を示す作品を発表し続けている。これらの小説家の研究を通して、軽視されがちな北アイルランド小説の意義と価値、世界的な普遍性を実証する。 研究を遂行する上での問題点は、バーミンガムの手書きの手紙が判読しづらいことで、図書館司書に判読の手助けをしてもらっている。
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Research Products
(6 results)