• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Annual Research Report

新しい『ファウスト』研究における多面的な解釈の総合の試み

Research Project

Project/Area Number 22520291
Research InstitutionHirosaki University

Principal Investigator

田中 岩男  弘前大学, 人文学部, 教授 (70091618)

Keywords近代 / 歴史 / 自然 / 救済
Research Abstract

23年度の具体的な成果として、二本の論文を公刊した。本研究との関連で、この成果について簡単に述べることにする。
「ヘレナ劇」についてはすでに、主として作品内在的解釈によって、「詩人・芸術家」ファウストによる内面的な美の創造のドラマととらえて、いくつかの論文を発表してきた。そのヘレナの「現実性」を再検討した「ヘレナ劇はどこで演じられているのか?」では、「ヘレナ劇」において使われている重要なモチーフと当時世上を賑わせた社会現象ないし事件、例えば「ファンタスマゴリア」「飛行船」「ギリシア独立戦争におけるバイロンの戦死」等との関係を取り上げ、文学社会学的方法に立って異なる視点から論究した。これによって、限られた問題についてであるが、自ら「多面的な解釈」を実験的に行い、それを総合するこころみを実践することができた。
「山と海、そして火と水」の論文では、「行為の悲劇」ないし「支配者の悲劇」が展開される第五幕の出発点となる「第四幕の構図」について検討した。第五幕の悲劇、さらにはファウストの死と救いの問題を考えるために、これはどうしても必須の準備作業であった。そのさい特に、第二幕「古典的ヴァルプルギスの夜」に始まる火成論と水成論をめぐる議論が重要な手掛かりとなった。人工の火から生まれたホムンクルスが水の世界をめざし、自然との合一に終わるのに対して、ヘレナの世界から帰ったファウストは「高山」を降りると早くも、海を支配しようという壮大な計画をいだくからである。「人工」による「自然」の制御である。その悲劇性と挫折を通じて、近代人ファウストの救いについて考察することが、まとめとして今後の課題となる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

東日本大震災の影響もあり、少し遅れ気味であったが、遅れを取り戻すべく鋭意努力中で、かなりの程度に計画に追いついているところである。

Strategy for Future Research Activity

『ファウスト』第五幕のファウストの死と救済の問題の検討を通して、全体のまとめにはいる予定である。その際、大震災とその後の原発事故を受けて、近代の自然観の再検討は避けて通れないと考えている。

  • Research Products

    (2 results)

All 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results)

  • [Journal Article] 山と海、そして火と水-『ファウスト第二部』第四幕の構図2011

    • Author(s)
      田中岩男
    • Journal Title

      モルフォロギア

      Volume: 33 Pages: 49-73

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] ヘレナ劇はどこで演じられているのか?-ヘレナの「現実性」をめぐって2011

    • Author(s)
      田中岩男
    • Journal Title

      文学における不在-原研二先生追悼論文集

      Pages: 12-25

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2013-06-26  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi