2012 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀チェコの視覚芸術における文学的想像力のはたらきと意味
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22520322
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
赤塚 若樹 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (80404953)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 映像文化 / 中欧 / 視覚文化 / 表象文化論 / 東欧 / 美術史 / 文化史 / 比較文学 |
Research Abstract |
過去2年にわたり収集につとめた関連資料の分析作業に力を注いだ。もっとも重要なテーマにひとつであった、60年代のチェコスロヴァキアのヌーヴェル・ヴァーグについては、ヴィエラ・ヒチロヴァーの映画『ひなぎく』にかんする論文を発表した。制作当時の政治的・社会的状況の検証、先行研究の批判的検討、映像の特徴ならびにガーリーカルチャーとのつながりという点での今日的意義の考察など、さまざまな観点からこの作品を論じ、結果としてそれは400字詰め原稿用紙に換算して100枚程度の論文となった。もうひとつの重要なテーマであるアニメーション映画については、ここ数年来進めてきた、チェコ・アニメーションをあつかう書籍の編集・翻訳作業を継続して行なった。思いのほかこれに時間がとられたが、それもほぼ完了している。当初予定していた、平成24年度中の刊行は諸事情から果たせなかったが、平成25年度の早い段階で刊行されるものと思われる。チェコの視覚芸術のみならず、アニメーション文化、映像文化全般の受容ならびにその研究にとってたいへん有意義な本になると確信している。チェコスロヴァキアの「正常化」時代に音楽家ユニオン・ジャズ部門がくりひろげた、芸術全般にかかわる活動を昨年度検討し、論文を発表した。ジャズセクションの活動は文学・芸術のさまざまな領域においてきわめて意義深いものなので、今年度もひきつづき資料収集ならびにその分析作業を進めた。研究成果としてはほかに、今年度中に翻訳刊行された、チェコの小説2冊の書評を発表している。本研究課題に隣接する領域のものとしては、抽象アニメーション作家オスカー・フィッシンガーが20世紀半ばにアメリカでくりひろげた活動を検証する論文を発表したほか、発表は平成25年度にずれ込むが、ポーランドの作家ブルーノ・シュルツとさまざまな芸術分野へのその影響を考察する論文も執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個別のテーマにかんする具体的な分析・考察をいま以上に進めていき、論文などによって成果を公表しなければならないとはいえ、たとえばチェコ・アニメーションにかんする翻訳書の刊行についてもメドが立つなど、全体としてみればおおむね予定どおりに研究が進められたものと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
過去3年にわたって収集につとめた20世紀チェコの視覚芸術にかんする資料の分析ならびに検証をとおして、本研究のテーマである「文学的想像力のはたらきと意味」にかんする考察をさまざまな観点から進め、研究全体のまとめを行なう。 これまではどちらかといえば、具体的な研究世紀は本研究課題のいわば周辺領域にかかわるものが多かったといえなくもない。今年度はテーマの中心的課題にひとつひとつ取り組んでいき、論文というかたちでまとめたいと思う。とりわけ視覚芸術を生み出す場に文学者が具体的にどのように参加していったか、そしてそこにどのような結果がもたらされたのかを検証することを第一の課題としたい。取り上げるジャンルとしては劇映画とアニメーション映画が中心となり、人的ネットワークの問題、コラボレーションの問題、アダプテーションの問題も視野に入れながら研究を進めていくつもりでいる。社会主義時代の芸術については社会的・歴史的・政治的状況も無視できず、そこでどのような芸術的な営みがなされたのかについても考察を深めていきたい。都市を中心に発展する大衆文化という観点から検討をはじめた、1920年代のチェコスロヴァキア独自の芸術運動ポエティズム、「イメージとことば」という見地からその美的特質を考察しているシュルレアリスム、そして芸術全般にかかわる運動という視座からから調査・検討を進めている、「正常化」時代の音楽家ユニオン・ジャズ部門の活動については今年度もひきつづき研究をつづけていく。
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Research Products
(5 results)