2010 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半の知の形成と伝達における言語とイメージの相互作用
Project/Area Number |
22520330
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱中 春 法政大学, 社会学部, 准教授 (00294356)
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Keywords | 独文学 / 美術史 / 18世紀 / 言語とイメージ / 知 / リヒテンベルク |
Research Abstract |
本年度は、研究全体にかかわる基本的な文献・資料を収集するとともに、1.美術史学と2.観相学という問題圏にかかわる一次資料を収集し、考察した。具体的な研究内容は以下のとおりである。 1.18世紀のさまざまなホガース解説を比較・考察した。その結果、当時のホガース解説は、画家の伝記・絵の解説・カタログという三つの要素から構成されており、伝記とカタログが大きな比重をしめるものが多いのにたいして、リヒテンベルクのテクストは絵の解説のみからなっており、そこには作品史としての美術史記述の成立へと向かう流れが見いだされた。また、作品史の代表として古代彫刻ラオコーン群像をめぐる同時代の記述を、特定の比喩の系譜に注目して分析し、比喩がイメージと言語のあいだを結ぶ媒体としてさまざまな可能性をもつことを明らかにした。 2.リヒテンベルクがラーヴァーターの観相学にたいする対案として構想した『世界図絵』における言葉と図像の関係を、コメニウスの『世界図絵』と比較・考察した。その結果、リヒテンベルクの『世界図絵』は世界という書物からの抜き書き集として構想されており、そこで言葉と図像が相互に対応関係をもたないことによって、世界との一時的なつながりを保ち続ける試みであることが明らかになった。なおこれは、リヒテンベルクの『世界図絵』にかんする最初の包括的な研究である。 その他、本年度はドイツの美術史学者H.ブレーデカンプの著書『ダーウィンの珊瑚』を翻訳・解説し、次年度にとりあげる自然科学における言語とイメージの関係という問題について、その研究状況や方法論的な可能性を明らかにした。
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Research Products
(2 results)