2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520336
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 育弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70238476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神尾 達之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60152849)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複合 / 文化 / 身体 / 飲食 / 集合的欲望 / 社会的表象 / 変容 / 感性 |
Research Abstract |
福田は、共同研究面では、昨9月パリ・ソルボンヌ大学大学院地理学科飲食研究コースとの研究者との打ち合わせを行い、彼らとともに、パリで9月17日に行われたセルジー・ポントワーズ大学の飲食関連のマネージメントを学ぶ修士課程の卒業セミナーで、名古屋大学準教授のニコラ・ボーメール氏とともに日本の飲食文化の複合文化学的考察を行った。福田は、そこで「日本人の飲食慣行 ― すしの事例 ―」という題目で講演し、日本酒について講演したボーメール氏とともに活発な質疑応答を行った。セルジー・ポントワーズ大学は飲食研究に力を入れており、今後とも相互に交流することが確認された。 研究面では、関東大震災後の飲食行動やそれを支える感性の変容について、多様な資料にあたって分析し、飲食場の男女の住み分けを軸とした再編成が都市編成の変容につながっていたことを明らかにした。この研究の概要は、2013年に刊行予定のフランスの学術誌にフランス語論文として掲載されることが決まっている。さらに飲食行為と都市編成との関連について、1960年代後半を日本的なアレンジを加えた西洋料理が決定的にフランス料理へと転換する転回点とする視点から考察し、その研究の一端は紀要『学術研究』の61号に論文「西洋料理からフレンチへ ― 飲食場の空間論的転回 ―」として発表した。 神尾は本年度、「複合文化学」の方法論を教育の現場で応用する方策に取り組んだ。福田と神尾は本研究の成果を教育実践においても実りあるものにするために、数年前からそれぞれのゼミを合同で行っている。そのことによって、① 学生の研究対象に応じて多様な方法論を適切に選択し応用できるようになりつつあり、② 同一の研究対象を複合的に考察すること可能となりつつある。それらの成果は前後期に刊行される「ゼミ論集」「卒論集」に集約されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の福田は海外の研究者と連絡をとりつつ、複合文化学的な視点から飲食行為を分析した論文を執筆し、複合文化学的な方法論を確立しつあるからである。 また、神尾は、2期4年つとめた学術院長・学部長という学内の要職を離れ、これまで以上に研究時間がとれる状況にあり、事実、すでにラカン的な「象徴界」が崩壊し、いかに露呈しだした「現実界」に対応していくかについて研究を開始しており、その研究差成果の一端を三・四年のゼミで学生に発表しているからであり、さらにそうした研究をより複合的に転回するためルーマンの社会システム論の応用的展開を探っているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
福田は今後とも飲食をめぐって、この分野で先行する在フランスおよび在日本のフランス人研究者との連携を一段とつよめ、飲食行為と飲食に関する感性の複合文化学の方法論を日本における飲食物から飲食空間にいたる男女への振り分け(ジェンダー化)という大きなテーマを通して関する。とくに今年度は、戦後飲食空間が都市をどのように編成していったか、あるいは日本においてワインがどのように受容されていったかについて複合文化学的な研究を行う予定である。そして、このような具体的なテーマへの適用によって、複合文化学の方法論の有効性を証明したい。 神尾は、2期4年つとめた学術院長・学部長という学内の要職を離れ、これまで以上に研究時間がとれる状況を活かしていく以下のような研究を展開していくつもりである。アメリカで起きた9.11同時テロや日本を襲った3.11大震災といった未曾有の出来事を経験するなかで、人々は既存の社会秩序やそれにもとづく価値観(ラカン的な「象徴界」)の崩壊に遭遇しつつある。世界の人々は、この崩壊をどう捉え、どう生きていくかのだろうか。神尾は、この点について、複合文化学的な視点にたって考察していくことを大きな課題とする。とくに対象となるのは、日本人の集合的欲望の在り方であるが、それは否応なく世界的な文脈のなかに置かれており、世界との対比で分析することになるだろう。理論面においては、複合文化学にルーマンのシステム論を活用することが大きな課題となる。 研究遂行者である二人が想定する複合文化学は、既存の多くの方法論を摂取したうえで、それらを単に加算しただけの総花的なアプローチにならない新しい方法論の模索である。しかし、すでに研究して3年目になる今年は、そのような方法論の有効性を示すより充実した研究成果を出すことが課題となるだろう。
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Research Products
(3 results)