2010 Fiscal Year Annual Research Report
絶対王政期におけるイタリアの文化的環境の変容および「ガリレオ事件」の位置づけ
Project/Area Number |
22520338
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 満 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50242996)
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Keywords | イタリア文学 |
Research Abstract |
本研究は、絶対王政期のイタリアにおける知識人たちの真理の探究に対する態度の変容を追うことで、イタリアが18世紀以降ヨーロッパの知的リーダーの座から降りてしまった理由と、その決定的な契機が「ガリレオ事件」であったことを確認し、学際的にヨーロッパの「近代」を準備した環境を理解することを目的としているが、22年度はまずガリレオが聖書解釈に踏み込んだ経緯を明らかにした。数学的言語で書かれた書物である宇宙=自然が数学的言語で理解し得るのと同様に、比喩で書かれた書物である聖書を比喩で理解し得るとガリレオは考え、「カステッリ宛の書簡」等でそれを実践してしまったのである。そしてその際に、自然哲学の論理を持ち込んでしまった。聖書を根拠に自然学に容喙する神学者と同じことをしてしまったと言えよう。 さらには、「ガリレオ事件」以降のイタリアの文化的環境の変容の解明にとって、当初コペルニクス説に反対していたイエズス会士の天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリの存在の重要性を確認し、文献収集を行なった。彼の著作は復刻版等が存在しないので、当時の印刷本を直接複写するしかない。22年度はボローニャ大学で彼の主著Almagestum nouum...の全ページをデジタル撮影の形で収集することができた。 また、リッチョーリが活躍したボローニャは「ガリレオ事件」以降文化的重要度を増していくこともあり、今まで比較的日本でもよく研究されていたヴェネツィア、パドヴァ、フィレンツェ、ローマ等とは異なった視点からこの時代を見るのに、アドリアーノ・バンキエーリの「方言」の再評価を含め、この都市の文化的環境を研究する必要性を確認した。
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Research Products
(1 results)