2013 Fiscal Year Annual Research Report
絶対王政期におけるイタリアの文化的環境の変容および「ガリレオ事件」の位置づけ
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22520338
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 満 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50242996)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イタリア文学 |
Research Abstract |
リチェーティ宛の書簡(1639年)でガリレオは宇宙が有限か無限かについて触れ、「無限は、その性質上、限界を定められている私たちの知性によって理解(=包含)され得ない」と言って、有限存在である人間の知性が無限を理解できないことを確認している。人間の理性や想像力の及ばない無限に対して慎重な姿勢をとっているのである。 「ガリレオ事件」後のガリレオ派の学者たちの研究姿勢については、その中心的な人物として、17世紀後半に活躍した2人、トスカーナ大公フェルディナンド2世の主治医を務めたフランチェスコ・レーディとチメント学会書記を務めたロレンツォ・マガロッティについて分析した。両者ともガリレオの実験主義の精神を継承しており、チメント学会会員であったが、同時にクルスカ学会会員でもあり、前者は『クルスカ辞典』第3版の編纂にも加わり、言語学者の側面をあわせ持っていた。またマガロッティはアルカディア学会にも加わっており、両者とも自然学領域と文学領域にまたがる活動を行なっている。 レーディの主要著作『昆虫の発生をめぐる実験』(1668年)は生物の自然発生説を対照実験を用いて否定したものであるが、科学的記述だけではなく、ウェルギリウスからアリオストにいたる数多くの古典作品を引用した博覧強記の作品となっている。さらにレーディは長篇詩『トスカーナのバッカス』(1685年)を書いており、その中では、酒神バッカスがトスカーナを巡って五百にも及ぶ各地のワインを試していき、最後にはモンテプルチャーノ・ワインに栄誉を授けるまでが描かれている。一方、マガロッティはその著作の中で、ガリレオが残した「ワインは水分と光の合成物である」という言葉について文学と科学の混淆した検証を行なっているが、レーディの作品と関心を共有していることが看取できる。ガリレオ派の中には、このように知的快楽として自然研究を行なう学者が存在していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガリレオ派の分析に関しては、フランチェスコ・レーディやロレンツォ・マガロッティといったチメント学会の中心人物たちの分析まで進んでおり、天文学の領域については資料収集に着手したところまでは行けているので、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため、まとめの年として、過去4年間の研究の中で未消化の部分を補完する作業を行なった上で、領域別に進めた各研究を有機的に結びつける仕上げの総括作業を行なう。①「科学と宗教の関係」をめぐる書簡・著述の分析、②「無限を認識すること」のさらなる分析、③ブルーノやカンパネッラとガリレオの真理追求の態度に関する比較、④ガリレオ派の学者の研究姿勢のさらなる分析。以上の4点を主たる補完作業の中心とする。
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Research Products
(1 results)