2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520345
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
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Keywords | アルジェリア文学 / 北アフリカ文学 / ポストコロニアル / フランス語圏文学 / 多言語状況 / マグレブ文学 / アルジェリア / ムールード・フェラウーン |
Research Abstract |
本年度はアルジェリア現代文学状況の全体像をより詳しく把握するとともに、その成立状況の解明を試みるべく、現代アルジェリア文学の始祖と位置づけられているムールード・フェラウーンMouloud Feraounの代表作『貧者の息子』について分析をおこなった。 1)文献研究 アルジェリアのフランス語表現文学を3期に分けて、それぞれの時期の代表的作品を研究することによってアルジェリア文学の今日までの流れを捉えた。第1期:植民地時代(~1962年)、第2期:独立後の時代(1962年~80年代末)、第3期:テロリズムの時代と現代(1990年~)。なかでも第1期の重要作家であり、現代アルジェリア文学の端緒となったムールード・フェラウーンの『貧者の息子』について、アルジェリアでしか手に入らない資料を用いながら、綿密な研究をおこなった。この結果は、65頁におよぶ日本で初めての本格的なフェラウーン研究論文として『文藝言語研究文藝編』61号に発表した(アルジェリア文学史の概観、作家の全体像を含む)。その成果としてはとりわけ、素朴な地方文学作家というレッテルを打ち破る、この作家の現代的意義を明らかにした。 2)実地調査・研究交流、および成果発表 アルジェリアが渡航注意地域となっているため、隣国チュニジアを中心に調査・研究交流をおこなった。平成23年ll月10日~19日にチュニジアに渡航し、日本チュニジアシンポジウム(TJASSSTll)でフェラウーン『貧者の息子』についての発表をおこなった。また平成24年3月9日~18日にチュニジアに再度渡航し、チュニス大学で特別講演を3回おこなった(日本と北アフリカの学術・文化交流、文学研究交流、北アフリカ文学研究について)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代アルジェリア文学の概観、およびその背景事情の調査を進めるとともに、個別研究として、アルジェリア現代文学の始祖と位置づけられる作家ムールード・フェラウーンの代表作『貧者の息子』について分析し、これまでの研究にはない視点でフェラウーン文学を見直すことができた。これによりアルジェリア文学の発展に関する重要な視点が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
現代アルジェリア文学を全般的にとらえるために、その創始期である1950年代の重要著作を検討する。なかでも重要作家であるムールード・フェラウーンについて平成24年度中に研究をまとめる。 さらに、第2期と言われる独立後の文学、第3期と言われる1990年代以降の文学について、主要作家の作品を具体的に検討する(とくに平成25年度にある程度のまとめをおこなう)。 アルジェリアは現在、渡航に注意が必要な国となっているので、現地調査が難しい場合は、隣国チュニジアの研究者との交流を生かしながら、研究を進める。
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Research Products
(8 results)