2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520345
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルジェリア文学 / 北アフリカ文学 / ポストコロニアル / フランス語圏文学 / 多言語状況 / マグレブ文学 / アルジェリア / ムールード・フェラウーン |
Research Abstract |
アルジェリアの現代文学の状況について包括的な視座を形成するとともに、すぐれた作品を取り上げて研究した。 本年度は主に以下の内容で研究を進めた。1)現代アルジェリア文学の始祖と位置づけられるムールード・フェウーンの主要作品を視野に収めてこの作家の総合的な輪郭を明らかにするとともに、とりわけアルジェリア戦争中に書かれた遺作『薔薇の街』別題名『記念日』(La Cite des roses, 2007)を詳細に分析し、これまで見過ごされてきた諸特質を抽出した。同時に日記、書簡等を参照して、時代状況、とりわけアルジェリア独立戦争と作家とのかかわりについて、新たな観点からフェラウーンの文学を掘り起こした。 2)その他のアルジェリア文学について次年度で踏み込んだ研究ができるよう準備した。 3)アルジェリアに関連して作成された映像資料を多数閲覧して、とりわけ独立戦争および1990年代の内乱の経緯と、現代におけるその捉え直しの特徴をつかんだ。 具体的な研究手続きとしては、1)5月にアルジェリア(オランおよびアルジェ)に滞在し、アルジェのほか、地方都市であるオランの出版状況やオラン大学での研究者の動向を調査詩研究交流をおこなうとともに、第2回日本=アルジェリア学術会議で、フェラウーンの文学をめぐる口頭発表をおこなった。2)マグレブ文学研究会を立ち上げ、日本で初めてのアルジェリア文学のシンポジウム〈Journée Mouloud Feraoun:ムールード・フェラウン没後50周年記念シンポジウム〉を開催し、口頭発表をおこなった。3)ほかに学術講演1件と、フェラウーン『記念日』をめぐる論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代アルジェリア文学を創始したと言われるムールード・フェラウーンの研究については、次々と新たな課題が見つかり、非常の充実した研究が展開てできている。アルジェだけでなくオランでも現地の研究者との学術交流が果たせたことも大きな成果である。またマグレブ文学研究会を他の研究者とともに創始し、日本で初めてのアルジェリア文学をめぐるシンポジウムを開催することができたことも、大きな意義を持つ。アルジェリア文学全体の概観はゆっくりとしか進展していないが、映像資料の探査・閲覧など、新たな方面での情報収集もおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
アルジェリア文学全体の把握に務めるが、個人単独研究では限界があるので、これは概観にとどめる。初期の重要作家、ムールード・フェラウーンについては、より学術的な専門性を高めた研究を包括的なかたちでおこないたい。 アルジェリアは現在、ますます渡航に注意が必要な国となっているので、現地調査が難しい場合は、隣国チュニジアの研究者との交流を生かしながら、研究をまとめたい。
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Research Products
(6 results)