2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭のインド旅行記におけるアジア主義と黄禍論の日英比較研究
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22520361
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (80334613)
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Keywords | チャールズ・ピアソン / ジョージ・バードウッド / オリエンタリズム / 日本郵船 / ジェームズ・カズンズ / 浅川巧 / グルチャラン・シン / 神智学 |
Research Abstract |
二年目の23年度は、3つの論文を発表し、4つの口頭発表を行った。 論文では第一に「黄禍論の予言者チャールズ・ピアソン」を執筆し、ピアソンがインドと中国の成長を恐れ、英国での黄禍論の基礎となったことを指摘した。 第二に、岡倉天心などによる東洋美術史構想において仮想敵となった「ジョージ・バードウッドのインド工芸論」について、看過されてきたその主張を詳述し、一方で、アジア主義にも転用された二面性を指摘した。 第三に、「カーゴ・カルト幻想-飛行機崇拝の物語とその伝播」において、日英の旅行記で頻出するインドの魔術(師)について、例の多くがペナンやシンガポールなど英領寄港地での経験であり、そのオリエンタリズムが船に代わって新たな旅の手段となった飛行機に投影されたことを明らかにした。 口頭発表では第一に「欧州航路の比較文学-和辻哲郎の『風土』を中心に-」において、日英の旅行記が東西文明論として機能していたこと、それゆえインドが注目されていたことを指摘した。 第二に、"Asian Design for the Asians? the Lotus Pattern Story concerning Gurcharan Singh's 1920 Visit to Takumi Asakawa in Korea"において、日英印における神智学、アジア主義、黄禍論を結ぶ典型的な人物としてグルチャラン・シン、ジェームズ・カズンズ、浅川巧のネットワークを発掘し、ここでもバードウッドが仮想敵とされていた理由を分析した。 第三に、上記発表を基にして、藤原銀次郎の製紙事業のアジア進出ほか日本に関連する事例を増補し、「李朝白磁からデリー・ブルーへ-浅川巧とグルチャラン・シンの交流とその余波」を発表した。 第四に、日本においてアジア主義の先駆者として山田長政の事績が異人種間ロマンスとして再創造され、インド旅行への途上において特権的に言及されたことを「仏塔の国への憧憬と山田長政幻想大鳥圭介から長谷川一夫まで」で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、科研費の七割支給により当初予定していたインドの文書資料館調査が不可能になったもめの、それを補えるようロンドンのインド省文書を精査した結果、目的としていたアジア主義についての英国側の詳細な調査資料の一部を発掘できたため。第二に、初年度と二年度を合計して、当初の予定以上である6つの論文、9つの口頭発表を行い、英国でも成果を還元することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き文献調査をもとに、大英図書館にあるインド省文書との照合を行い、日英の旅行記におけるアジア主義と黄禍論の相関を比較し分析する。
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Research Products
(7 results)