2010 Fiscal Year Annual Research Report
早期辞賦の伝承と「作者」をめぐる伝説―司馬相如・宋玉を中心に―
Project/Area Number |
22520363
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
谷口 洋 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (40278437)
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Keywords | 中国文学 / 辞賦 / 伝承 / 司馬相如 / 宋玉 / 伝説 |
Research Abstract |
本研究の直接の目的は、宋玉や司馬相如の「作品」として伝わっているものが、いかにして今見るような形になったかということを究明することである。作者をめぐる事実や、作品の真偽に関する考証ではなく、作者がそれぞれの時代にどのように見られていたかが関心の対象となる。 今年度は、その第1年度として、司馬相如について考察したが、司馬相如の場合、その最初の伝記たる『史記』司馬相如列伝が、ほとんど彼の作品の引用からなるという特殊性がある。そのため、作業の前提として、『史記』に引かれる作品の本来の性質を確認しておく必要が生じた。 そこで今年度は、相如の代表作でもある「天子遊猟賦(子虚上林賦)」の、特に核心となる部分である、天子の反省と善政の場面について、表現論的分析を行った。その結果、天子の反省の表現には道家文献と共通性があり、それは起源的には神霊との合一を表すものであること、善政の場面では三字句が頻出し、それは本来儀礼における神霊への誓詞と関連したことが明らかとなった。いずれの場合にも、司馬相如は、それらの表現に付随していた霊性を払拭し、狩の形象、辞賦という文体を、現実の天子を描くものに作り替えたのである。この点は、報告者のこれまでの研究を補強するとともに、司馬相如作品がどのように受容されていったかを考える際の起点となるものである。 以上の研究と並行して、研究協力者の協力を得て、国内辞賦研究目録の作成に着手した。本年度は第一段階として、既存のデータベースを利用して基礎資料を収集し、それによって全体の傾向を見定め、今後の編集方針を策定した。
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Research Products
(1 results)