2012 Fiscal Year Annual Research Report
早期辞賦の伝承と「作者」をめぐる伝説―司馬相如・宋玉を中心に―
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22520363
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
谷口 洋 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40278437)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中国文学 / 辞賦 / 宋玉 / テクスト / 『史記』 / 司馬相如 / 伝説 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った宋玉賦の伝承に関する研究を補完し展開するものとして、現在伝わる宋玉賦のテクストそのものに対する考察を行った。特に序と本文、作中人物の対話等に着目し、現在総集に収める宋玉賦が、はじめから完結した「作品」として存在したのではなく、篇としてどう数えるかということさえ確定しがたい流動的なものであり、伝承の過程で分割・併合などの編集が施されたものであることを、具体的に明らかにした。宋玉賦については、これまでもっぱら作者や成立年代などテクスト外部の問題が論じられてきたが、根源的な問題はテクストの内部にこそ存するのである。 本年度はまた、司馬相如の作品の伝承と相如にまつわる伝説との関連についての研究をも行った。古来偽作との疑いの絶えなかった「長門賦」について、その序にいうところが、庶民的性格をもちつつ宮廷の寵児となった一種のアイドルとしての司馬相如像と、陰湿な宮廷内抗争の当事者から悲劇のヒロインへと変貌した陳皇后の人物像との上に成立したことを論じた。「長門賦」は、実際の作者が誰であれ、相如の作として伝承される必然性があったのである。 司馬相如についてはさらに、『史記』にみる司馬遷の相如に対する見方について考察し、相如を戦国以来の「諫言の士」の枠組みで理解しようとする姿勢と、その枠に収まらない同時代の伝承に対する困惑とが混在していることを指摘した。同時代の司馬相如像については、前年度にも考察したところではあるが、本年度は特に晩年の神秘化について、病に関する記述に注目してさらに考察を深めた。 本年度も、引き続き大学院生の協力を得て、辞賦研究文献目録のための資料収集を行い、データの蓄積に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
論文の公刊や、国際学会を含む学会発表を順調に行った結果、最終年度を残し、当初予定した論点について一通りの見解を示すことができた。残り1年でのさらなる展開と総括に向け、余裕を持って取り組める段階に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの学会発表の成果を論文として公刊することに力を注ぐとともに、本研究全体を見渡すような総論的考察を計画している。その成果は、既に招請を受けている海外の学会で発表する予定である。また辞賦研究文献目録の完成に向け、引き続き大学院生の協力を得る。
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Research Products
(6 results)