2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520366
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大池 真知子 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (90313395)
|
Keywords | 外国文学 / アフリカ / エイズ |
Research Abstract |
本年度は、アフリカの草の根の女たちがHIV/エイズについて書いている執筆物のうち、メモリーブックと創作的ノンフィクションについて知る目的で、以下の通り研究を行った。 1.メモリーブックと創作的ノンフィクションを含むHIV/エイズについての執筆物を収集し、分析した。 その結果、それらの執筆物を(1)自伝と評伝、(2)聞き書き集、(3)作文コンテスト作品集、(4)草の根に執筆支援をするプロジェクトの成果物、の4種類に分類できることがわかった。メモリーブックは(4)に、創作的ノンフィクションは(2)に含まれる。 2.8月にウガンダでメモリーブックと創作的ノンフィクションの調査を行った。 メモリーブックを10冊程度分析するとともに、書き手にインタビューすることで、メモリーブックは、書き手と病との関係に応じて3種類に分類できることが明らかになった。(1)死の床で書かれるメモリーブック、(2)快復の証としてのメモリーブック、(3)病を生きるメモリーブック、である。一方、集団で執筆するという執筆過程については不明な点が多く、執筆グループの活動についてさらに調査をする必要があることがわかった。 創作的ノンフィクションについては、書き手と語り手の間にある立場の差が、代弁/表象の上で障害となっていることが明らかになった。しかしその障害は、さまざまな語りを集合させることで克服可能であることも明らかになった。というのは、一冊の創作的ノンフィクションは多数の聞き書きから成り、それぞれの聞き書きにおける語り手と書き手の関係は異なり、代弁/表象の仕方も異なるからだ。それら多様な聞き書きが一冊にまとめられることで短所を補い合い、一冊全体で女たちの経験を代弁/表象し得ているのではないかと考えられる。
|
Research Products
(2 results)