Research Abstract |
本研究は、コリャーク語(チュクチ・カムチャツカ語族)の形容詞を「属性叙述」という枠組みの中で捉え直し,同系の他言語の形容詞と比較することを目指している。平成22年度には,プロトタイプ的形容詞の収集ならびに意味タイプの整理と「属性叙述」からのコリャーク語形容詞述語文の捉え直しをおこなった。平成23年度にはその成果にもとづき,平成24年度の語族間の比較研究の準備段階として,コリャーク語動詞屈折体系の見直しをおこなうとともに同系の他言語の形容詞に関する先行研究を収集,整理分析した。それにより次のことが明らかになった。 (1)イテリメン語にはN形はないが,これと似た機能をもつ別の形式がある。また,他の言語とは異なり,形容詞専用形式がある。 (2)その他の言語,すなわち,チュクチ語,ケレク語,アリュートル語にはN形があるが,その顕現のしかたは一様ではない。すなわち, (2a)アリュートル語のN形の意味・機能は,コリャーク語同様,主として属性叙述であると考えられるが,例外的には事象叙述らしき例も見られる。 (2b)ケレク語にはコリャーク語同様,N形,KU形いずれもあり,両者が属性叙述か事象叙述かで対立している可能性がある。 (2c)チュクチ語のN形には,属性叙述だけではなく事象叙述の意味・機能がある。 以上の知見は,平成24年度の研究にとって重要な基礎となった。 なお,予定していた現地調査も平成24年2月28日から3,月6日まで無事おこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,予定していたコリャーク語の動詞屈折体系の見直し,他言語との予備的比較とも計画通りおこなわれ,その結果,いくつかの重要な知見を得ることができた。また,これらの研究のための現地調査も予定通りおこなわれた。研究成果発表も後述のとおりおこなわれた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,当初の計画通り,同系のチュクチ語,アリュートル語,イテリメン語の専門家に連繋研究者として研究に参加していただき,平成23年度に先行文献の整理分析を通して得られた知見を,各専門家が収集した一次資料と照らし合わせることにより,その是非を検証していく作業を進めたい。
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