Research Abstract |
今期も,南琉球諸方言の内で,話者が90歳を越えており,その意味でも調査が急がれる与那国島方言を中心に調査研究を行なった。特に,これまで終止形以外は研究のなかった動詞の活用形アクセントを精査した。 今期最初の発表物-アクセント資料(2)-では,150の動詞について26の活用形を取り上げてそのアクセントを示した。動詞も体言と同様に3型アクセントであるが,そのパターンは下記の合計6つに分類されることが明らかになった。具体的に述べると,終止形がA型の動詞はすべての活用形がA型で一貫する。1例しか見つかっていない終止形C型の動詞もC型でほぼ一貫するものの,一部にB型が主に併用で出て来る。それに対してB型は,すべてB型で一貫するタイプの他に,その中で段階的にC型の数が増える3つの下位タイプが存在する。 すなわち,N型アクセントの一つではあるが,全体として活用形における型の一貫性は守られていないこと,その中にあっては,A型は一貫しているのに対して,B型が4種類に分かれることが特徴である。これが意味することについては,琉球方言のアクセント史全体の中で,さらに考えていく必要がある。 続く報告の(3)では,活用形を主要な7つに搾り,逆に語数を300語強に増やした資料を提示した。 これで主要な活用形のアクセントについては,ほぼ調査を終えたと言って良いと思われる。ただし,B型の中の下位分類の条件は今後詰めなければならない。また,数例を調べただけではあるが,複合動詞が非常に興味深い振る舞いをする点があるので,それも今後の調査で明らかにして行きたい。 その他については,宮古島方言なども調べて問題点が明らかになってきたので,最後の1年は,与那国方言の他に,その周辺方言の調査も進展させたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
与那国方言については順調で,予定通り,ないしはそれ以上に進展している。一方で,他の島の調査は予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
全体のバランスから言うと,これまでは与那国島方言に集中し過ぎた感が無きにしもあらずかもしれないが,毎回お願いをしている話者が高齢であり,これ以上に協力的でかつ方言アクセントを保存している方が見つかるとは考えにくいので,賢明な選択であったと判断している。今期も,可能な限り,その調査を進めていく予定である。 ただし,その分,他の島の調査が遅れているので,今期はできるだけそちらにも時間を割くように努めたい。
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