2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520437
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
黒沢 宏和 琉球大学, 法文学部, 准教授 (20264468)
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Keywords | 古高ドイツ語 / モダリテート / 接続法 / タツィアーン / ラテン語 / 副文 / 法 / 聖書翻訳 |
Research Abstract |
本年度は、古高ドイツ語ではなぜ本来は直説法であるはずの副文の定動詞が主文の影響によって接続法になるのか、言い換えば、この接続法は果たして主文の影響によるものなのか否かを解明することを課題とした。この課題を解決する為に、ラテン語・古高ドイツ語の対訳の作品『タツィアーン』'から、ラテン語では副文の定動詞が直説法であるにも拘らず、古高ドイツ語では接続法で訳されている事例を28例厳選し、これを考察の対象とした。本年度は手始めに主文が疑問文・否定文という事例に限定した。2011年7月に、沖縄外国文学会第26回大会で「モダリテートから見た古高ドイツ語の副文における接続法-主文が疑問文・否定文の場合-」と題して口頭発表し、研究成果の一部を発表した。その後、8月にはドイツへ赴き、デュッセルドルフ大学・ベルリン自由大学・レーゲンスブルク大学で文献収集を行った。これらの資料や学会発表後の質疑応答を踏まえ、研究内容をさらに修正・深化させ、その成果を『独逸文学』第56号へ投稿した。本年度の研究成果として以下の2点が明らかとなった。 1)既述の28例においては、モダリテートという観点から見れば主文の影響ではなく、コンテクストの意味内容に合致した法として接続法が用いられている。 2)言語史的観点からすれば、ゲルマン語は意志を表す接続法(Voluntativ)及び可能法(Potentialis)という二つの接続法を有していたが、「推量」「可能性」というモダリテートが表されていることから判断して、古高ドイツ語に現れた接続法は「可能法」と解釈できる。 来年度は本年度の研究をさらに推し進め、主文が疑問文・否定文以外のケースにも本年度得られた成果があてはまるかどうかを検証したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に変更はあるものの、古高ドイツ語の副文において接続法が頻繁に現れる現象を、従来の解釈とは異なり、モダリテートという新しい観点から解決の糸口を見出しつつあるから。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、『タツィアーン』以外にも『イシドール』や『オットフリート』を研究の対象とする予定であったが、予定を変更し、『タツィアーン』に焦点を絞って研究を進めることにしたい。これにより、研究内容をより深化させ、一定の成果が期待される。来年度(最終年度)は、1)主文のタイプと副文に現れる接続法との関係、2)どこまでモダリテートの観点から説明できるのか、その限界と可能性、3)それらの接続法が意志を表す接続法なのか、可能法なのかを解明し、本研究のまとめとしたい。
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Research Products
(2 results)