2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者が語るライフストーリーコーパスの作成と日独対照研究
Project/Area Number |
22520450
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
菅谷 泰行 関西医科大学, 医学部, 准教授 (00206393)
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Keywords | 高齢者 / ライフストーリー / 老年言語学 / ナラティブ / 日独対照 |
Research Abstract |
本研究課題は1)「語り」に関する文献調査、2)日本人高齢者を対象とするライフストーリーの収集と分析、3)ドイツ語圏に住む高齢者を対象とするライフストーリーの収集と分析という3つの目標を掲げ、研究活動を進めている。平成23年度はこれらの目標のうち、先ず1)に関しては、日本、アメリカ、ドイツ語圏の医療分野におけるナラティヴ・アプローチの歴史と現状について文献調査を実施し、ヘルスコミュニケーションのほか、メディカルコミュニケーションや医学教育におけるクリニカルクラークシップ等との関連からナラティブ・アプローチの必要性と可能性について考察を加えた。次に2)に関しては、本研究課題の平成22年度研究事業として行ってきた国内の高齢者ライフストーリーインタビュー調査で採録したデータの文字化とトランスクリプション化の作業を継続実施し、誤記の訂正、表記の統一等を行い、全体として統一の取れた整合性のあるコーパスの作成を進めた。この作業によって国内で収録したインタビューイ97名分のデータについて、第2次的テクスト化作業を終了させた。最後に上記の第3の目的に関しては、オーストリアのグラーツ及びスイスのチューリヒに所在する有料老人ホームと高齢者介護施設を訪問し、施設に暮らす高齢者へのライフストーリーインタビュー調査を実施し、採録したライフストーリーのテクスト化とトランスクリプション化の作業を行った。すでに転記データ化の作業を進めてきたドイツにおける収録データと合体させ、ドイツ語圏全体では、45人の高齢者インタビューデータについて、コーパス化に必要な文字化の第1次作業を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題が掲げる3つの目標のうち、第1の文献研究に関しては、今回の研究調査によって、医療看護分野についての全体的・歴史的考察と文献調査を終えることができた。しかし、ストーリー研究は医学看護領域のほか、人文社会学の諸分野、さらに近年は情報学等の工学領域においても研究が行われており、これらを含めたストーリー研究の全体像を俯瞰するような文献リストの作成には至っていない。次に第2の目標である国内での高齢者ライフストーリーデータの収集とコーパス化については、すでに全体で97人の高齢者からインタビューデータを収集し(インタビューの総時間数は176時間52分01秒)、かつそのデータのトランスクリプション化を終えており、本研究課題の当初の目標をほぼ達成したと評価される。最後に第3の目標である海外でのライフストーリーデータの収集とコーパス化については、ドイツ、オーストリア、スイスという言語地理的に見て、3つの主要なドイツ語圏の国に暮らす高齢者からインタビューデータを収集することができたことで、言語コーパスとしての価値を高めることができたと評価されるが、他面、インタビューイの総数は3国を合わせて45名(インタビューの総時間数は32時間04分23秒)と少なく、本研究課題の当初の目標値には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が掲げる3つの目標のうち、第1の文献研究については、本年度において対象とした医療看護分野についての研究調査を更に深めるとともに、人文社会学分野におけるナラティブ研究に考察の範囲を広げ、段階的に学際的な様相を呈するストーリー研究の全体像に迫っていきたいと考える。次に第2の目標である国内での高齢者ライフストーリーデータのテクスト化については、インタビューデータの最終的な点検を行い、コーパス化を完成させたいと考える。最後に第3の目標である海外でのライフストーリーデータのテクスト化については、インタビューデータの文字化と修正及び点検等の編集作業を完了させ、コーパス化へ繋げたいと考える。
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Research Products
(1 results)