2011 Fiscal Year Annual Research Report
純化論の観点から見た近代国語観の多様性に関する歴史的研究
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22520455
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 教授 (30160584)
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Keywords | 国語純化 / 柳田国男 / 標準語 / 国語教育 |
Research Abstract |
平成23年度は、主として保科孝一関係資料の継続的な収集分析、柳田国男関係の新資料(成城大学民俗学研究所柳田国男文庫における柳田旧蔵書への書き込み情報)の掘り起こし、重要地域における地方教育会誌等による情報の収集分析を中心に作業を進めた。研究内容としては、大正期・昭和初期に焦点を当てつつ、明治期の国語調査委員会による国家語(標準語)概念に代替する新たな国語観の掘り起こしと評価の見直しのための新資料の収集分析を行った。具体的には、1)『教育関係雑誌目次集成』及び『東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫所蔵雑誌目次総覧』等の資料を各地図書館で閲覧して、地方教育史料による学校現場での標準語教育の行き詰まり状況と郷土教育等に反映していく民俗的国語観の生成状況の確認、2)柳田国男による国語に関する言説の変動の把握、3)『国語教育』等の教育雑誌に反映した言語学者・方言研究者・民俗学者による新たな国語観の呈示状況の把握、の3段階で資料収集・歴史的分析を進めた。資料の収集に当たっては、適宜、ディジタル記憶媒体の購入や旅費等を執行した。また、関連する入手可能な図書資料を購入した。平成23年度の研究成果のうち、柳田国男の国語観に関係する部分について、G.Thomasによる純化論の枠組みにおいては、明治期の国家語(標準語)政策が革新的純化であるのに対し、第二次世界大戦後のヨーロッパにおける国民国家的国語づくりに影響を受けた、民俗的純化を代表する国語観であることを、國學院大学国語研究会平成23年度前期大会(7月2日)において「純化論の観点から見た近代国語観の変遷-柳田国男に焦点を当てて-」として口頭発表(招待講演)した。併せて、『國學院雑誌』112-12(12月15日発行:pp15-25)に同タイトルで論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来の国語政策、国語教育、言語生活史のなかで触れられることのなかった、地域の方言への愛着に根ざした国語観が戦前において存在したことを検証することを目的の一つとしている。このことに関して、柳田国男等の民俗的立場のみならず、直接国家語(標準語)教育に携わった国語教師の立場からも少なからず民俗的国語観が表明されていることが地方教育資料等を通じて確認することができたため、研究の目的は概ね順調に達成されていると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
地方教育資料の調査に当たっては、『教育関係雑誌目次集成』及び『東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫所蔵雑誌目次総覧』等による雑誌記事情報の閲覧が有効であった。その一方で、上記図書に記載されていない地方教育雑誌については、現地県立図書館もしくは国立大学附属図書館に赴き、原資料を閲覧して調査を行うことが必要である。これらの地域の中には近代の言語生活を振り返る上で重要な沖縄・鹿児島等の地域が残されており、やや長期にわたる臨地調査を実施する必要がある。
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Research Products
(2 results)