2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520483
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
飛田 良文 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 名誉所員(独立行政法人国立国語研究所) (40000418)
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Keywords | 語彙 / 意味 / 外来語 / 語構成 / 日本語学 |
Research Abstract |
明治以降の文学作品には、日本の近代化にともなう西洋化が、外来語に色濃く反映している。その外来語の原語・表記・語構成・意味分野が、どのように変化してきたか、その実態を明らかにしたい。 そのため100作品を選定し、信頼の置ける初版本あるいは、そのコピーを入手し、外来語を採集し、作品別の出現順用例集を作成した。 明治時代からは、初期の作品として仮名垣魯文の「西洋道中膝栗毛」「安愚楽鍋」の他に、松村春輔他による「春雨文庫」、戸田欽堂の「情海波瀾」などから外来語を採集し、中期は小説の興隆に従い、坪内逍遙や末広鉄腸、矢野龍渓等の一般に広く読まれた作品から、後期は夏目漱石「吾輩は猫である」、森鴎外「雁」、幸田露伴「袖珍小説」などから採集した。 大正時代のものとしては、私小説の勃興、大正デモクラシーによるプロレタリア文学を考慮した。その上で、有島武郎の「生れ出る悩み」や武者小路実篤の「或る男」などの私小説的側面の大きなものと、宮嶋資夫「恨みなき殺人」や葉山嘉樹「海に生くる人々」などのプロレタリア文学から外来語を採集、データ化した。 昭和時代初期は、引き続きプレタリア文学に目を通し、徳永直「太陽のない街」、小林多喜二「蟹工船」などから、また、戦時中の作品として、獅子文六の「海軍」に目を通した。 戦後は、基本的に大衆向けの作品から、松本清張「点と線」、野坂昭如「死の器」などを対象とした。 以上のように、明治大正昭和の各時代で、社会の動きを反映すると思われる作品からデータを集めた。今後はこれらの用例文の点検と、外来語の分類にとりかかる予定である。
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