2011 Fiscal Year Annual Research Report
英語の史的コーパス構築とその利用による歴史社会言語学的研究
Project/Area Number |
22520495
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20264830)
|
Keywords | コーパス / 英語史 / 初期近代英語 / 歴史統語論 / 社会言語学 / データベース / 不定詞 / 動名詞 |
Research Abstract |
本研究の主要な目的は、オーダーメイドのコーパスの作成とそれを利用した言語研究の有効性を示すことにある。平成23年度においては、平成22年度に引き続き、Early English Books Onlineをもとに作成したコーパスEMEPS (Early Modern English Prose Selections)を使用して、試験的な言語研究を遂行した。コーパスの性質から、扱った時代は初期近代英語期が中心ではあるが、英語史全体を視野に入れながらの言語研究を心がけた。平成22年度は、否定を含意する動詞の中で特にf。rbidに焦点をあてたが、23年度は、さらにこの研究を発展させるべく、動詞doubtの歴史的発達を扱った。この分野については、すでにThe Oxford English Dictionaryの例文データを利用した詳細な先行研究(この研究も研究代表者によるもの)があるので、これを踏まえた上でEMEPSを分析し、新たに作成したコーパスの有効性を検証した。また、初期近代英語期の構文の変化は現代英語の実態と関係していることも多い。現代英語の研究にはEMEPSは不向きであるので、Web上に公開されているコーパスを利用しながらこの不足を補い、初期近代英語と現代英語の間に観察できる言語変化の連続性にも焦点を当てた。具体的には、動詞convinceが現代英語(特にアメリカ英語)においてto不定詞の特殊な用法を発達させていることに着目し、これと関係する、あるいは萌芽ともいえる現象が古い時代の英語に観察できるのではないかという仮説をEMEPS等のコーパスを利用しながら検証した。 以上のような分析を通して、本研究のために構築したコーパス、E詑PSの有効性をある程度裏付ける結果を得ることができたといえる。ただし、これらの研究はまだ一事例に過ぎないので、来年度以降も、さらなるパイロットスタディを重ねていくことが必要であろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展しているということができる。すでにオーダーメイドのコーパスとしてEMEPS (Early Modern English Prose Selections)の作成が進み、これをもとにしたいくつかのパイロット研究によって、その有効性が確認されつつある。平成22年度のforbidの研究に続いて、平成23年度では、doubt等についての研究を遂行し、ここでも、これまでのコーパス利用の研究を凌駕する結果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のように研究は順調に進展している。ただし、初期近代英語期は、英語の史的発達全体を見渡した場合にきわめて変動の大きな時期であるので、コーパスの有効性を確認するための言語研究においても、慎重な分析が必要となる。これまでのパイロット・スタディではいずれもコーパスの有効性を確認する結果が得られたが、扱う言語現象を変えながら、さらなる研究を進める必要があると考えられる。平成24年度以降もパイロット・スタディをさらに継続する予定である。
|
Research Products
(3 results)