2012 Fiscal Year Annual Research Report
英語の史的コーパス構築とその利用による歴史社会言語学的研究
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22520495
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コーパス / 英語史 / 社会言語学 / 初期近代英語 / 中英語 / データベース / 歴史統語論 |
Research Abstract |
本研究は、カスタムメイドのコーパスの作成とそれを利用した言語研究の有効性を示すことを主要目的としている。平成24年度においては、平成23年度に引き続き、自作のコーパスEMEPS (Early Modern English Prose Selections)の言語分析を行い、その有効性を確認するための研究を進めた。EMEPSは、インターネット上で利用可能なEarly English Books Onlineをもとに作成したコーパスである。扱った主な時代は、1500年から1700年までの初期近代英語期であるが、中英語後期にも焦点を当てながら、個別の動詞の構文の変化等を研究対象とした。特に、使役動詞のmakeがうしろに原形不定詞を従えるか、to不定詞を従えるか、についての詳しい分析を行い、現代英語で一般的である原形不定詞の構文の確立が、中英語後期から初期近代英語期に発達する過程を明らかにした。 同時に研究では、社会言語学的視点も重視した。特に15世紀の『パストン家書簡集』は、著者名が明らかな書簡資料を時系列的に提供してくれるという意味で貴重であり、研究では、この資料における副詞節と主節の談話的な関係を明らかにした。When, though, ifなどの接続詞に導かれた節は、主節に前置される場合と後置される場合があり、その位置関係には談話機能が明確に関与しているようである。電子テキストを利用した社会言語学的研究は本研究が目指すところの一つであるが、昨年度まではあまり進展しなかった領域であるので、今年度は貴重なデータを得ることができたと考える。初期近代英語期以降の時代についても、同様の研究が必要であるが、これは25年度以降に広げていきたい領域の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展していると考えている。自作のコーパスであるEMEPS (Early Modern English Prose Selections) の作成と、その有効性の検証を、昨年度に引き続き行った。有効性の検証にどこまで時間をかけるかは、今後の課題であるが、いずれのパイロットスタディにおいても、EMEPSを利用することで、初期近代英語期の英語の発達についての実態を、先行研究以上に詳細な形で明らかにできることができており、パイロットスタディといいながら、実質的な研究上の貢献を行っているということもできる。また、今年度は、今後の研究の方向性の一つである社会言語学的視点を、研究の中に導入することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように研究は順調に進展しているので、研究方針の概略は、これまでのものを維持しながら、さらに研究を進めていく予定である。25年度の方向としては、初期近代英語期に時代を限定することなく、英語史全体を視野に入れていく方向を、さらに強化したいと考えている。初期近代英語期は、さまざまな言語現象が大きく揺れ動いた時代であるが、その萌芽は、すでに中英語後期にも観察できることがわかっている。両者をつなぐ流動的な時代の言語変化にさらに焦点を当てていきたい。また後期近代英語期に入ると、今度は言語の揺れが安定していく方向に変化する。この、いわばモードの変化、についても意識する必要があろう。さらに、これまでの研究では、どちらかといえば、コーパス全体を扱った研究に焦点を置いてきたといえるが、個別のテキスト、個別の著者についても、研究を拡大することができればよいと考えている。
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Research Products
(2 results)