2012 Fiscal Year Annual Research Report
日英語と移動表現の類型論:直示性に注目した通言語的実験研究
Project/Area Number |
22520498
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 曜 神戸大学, その他の研究科, 教授 (40245303)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 日英語比較 / 意味的類型論 / 移動動詞 / 通言語的研究 / 実験的研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人や物が移動する現象を描写する移動表現において、言語間で見られる興味深い類型的な違いに関して、今まであまり注目されていなかった経路の直示性の表現(come,goなど)を考察することにより、新しい類型の全体像を示すこと、また、その検証のために、ビデオ映像を用いた発話実験を行ない、特に日英語の共通点と差異を実験的に示すことである。 2012年度は、昨年までの実験調査で得られたデータを分析すると共に、そこで捉えきれなかった現象を見るために、一部実験プログラムを一部改訂し、英語と日本語においてデータ収集を行った。また、そのデータをコーディングして統計的な分析をするための計算方法を考察した。また、中国語についても同じビデオを用いた調査を行うことができ、言語間での比較の幅が広がった。 そのデータから、英語、日本語におけるダイクシス表現が現れる条件について、今の時点で次のことが実験的に裏付けられた。英語が<話者の方へ>など、特定の場合にのみダイクシスを言語化する言語なのに対し、日本語はそのような制約がほとんど無い言語であること。また、英語ではダイクシスを動詞の付加要素か主動詞で表す言語であり、主動詞では様態と競合するために表現が限定される言語であるのに対し、日本語ではそのような競合がないこと、である。 このような相違点は、移動の様態・経路がどのように表現されるかという相違と共に、移動表現パターンの言語間変異の重要な側面を構成していると言える。 これらの成果の一部については、成果を日本国内において三つの機会で発表することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語と英語に関するデータの収集に関しては、日本語のデータ収集がやや遅れている。一方、関連する他の言語についての比較から予想以上に多くを学んでいる。成果の口頭発表もある程度行うことができた。全体的に見て、おおむね順調と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年度は最終年度であり、データの不備を補う補足的な調査を行う他は、分析と成果のまとめに重点を置く。分析に関しては、まだ終わっていない使役移動に関する実験データの分析を中心に行う。同じビデオを用いて他の言語で調査を行っている研究者と共に、総合的な分析を行っていく予定である。その上で、移動が言語においてどのように表現されるのか、その類型の本質に迫り、その中で英語と日本語がどのように位置づけられるのかを明らかにするのが最終目標である。また、その成果の一部を、国際学会において発表し、海外の研究者との交流も図りたい。期間内に英語での論文執筆も行う予定である。
|
Research Products
(4 results)