2011 Fiscal Year Annual Research Report
第2言語としての日本語習得と日本語フィラー習得の関係に関する調査研究
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22520520
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小出 慶一 埼玉大学, 教養学部, 教授 (60178192)
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Keywords | フィラー / 話しことば / 日本語習得 / 日本語教育 |
Research Abstract |
本年度は、日本語学習者のフィラーについてのデータ収集とその分析を主たる目的としていたが、その過程で、フィラーの規定の再考を迫られることになった。それは、データ収集に際しては、その対象が的確に規定されていなければならないが、実際のデータを前にすると、判断に迷うような例も少なくないからでもあった。同時に、フィラーとするものの範囲も再検討することにし、これまで検討対象としてきたフィラー専用の語、指示詞および副詞からの派生語に加えて、もうひとつのグループとして、応答表現のフィラー化について検討することにし、フィラーとして扱われることもある「そうですね」「いや」の2語についてその用法を検証した。 その結果、「そうですね」については、対人的な応答表現という面と、その対人性が希薄化し、自己指向的な談話標識というもう一つの用法のあることが観察された。後者は実質的な肯定の意味を失いつつあり、フィラー化の方向にあるともみられるが、現段階では談話標識としての実質的な機能を持っており、フィラーとするには至っていないと考えられる。 また、「いや」も、フィラー化しているとは言えないという結論に至った。それは、やはり実質的な談話操作性を持っているからである。が、内容間の関係を示すものとしての談話標識ではなく、「そうですね」とも共通するが、談話内容に対する話者の心的な姿勢を表示する点、さらに、その姿勢が大まかな方向が示されるだけでそれ以上の情報がないという点に、フィラーではないが、明確に談話内の要素とも言えない性格を持ったものであるとも言える。 その点で、話しことばに現れる要素を、もう少し緩い枠組みで捉える必要があるようにも思われた。 次年度に、この観点を生かして、再び当初の課題に沿ったデータの収集と分析を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第9項に述べたように、フィラーという対象の規定を再検討する必要が生じた。そのため、当初の計画よりいくぶん遅れている。しかし、日本語学習者の発話に現れる、学習段階に特徴的なフィラーの分析はおおむね行われており、次年度は、今年度の検討によって得られた新しい規定に基づくフィラーのデータ収集と分析を行うことで、当初の計画の実現を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
前項に述べたように、研究対象の規定を修正したことで、調査・分析の対象が広がったが、年度内に対応し、投書の計画を実現する予定である。
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