Research Abstract |
本年度は,外国人のビジネス日本語能力の評価基準として「BJTビジネス日本語能力テスト(以下,BJT)に基づくビジネス日本語Can-do statements(案)(以下,ビジネスCds)」を構築することを目的とし,予備調査によって明らかになった問題点に修正を加えた当該ビジネスCdsについて,信頼性と妥当性の再検証を行った。 以下は修正のプロセスである。 1)当該ビジネスCdsの内容や表現について,think aloud方式でヒアリングを行い,意見を収集し,修正点として反映。2)1)に基づいて修正したビジネスCdsを作成。また,「話す」10項目,「書く」10項目を作成し,ビジネスCds調査票に追加。3)2)を11ヶ国語に翻訳。 本調査は,2010年8月~10月に琉球大学および東京都内の大学,日本語学校計4校で実施した。被験者数は203名で,有効回答数は192名であった。本調査で用いたビジネスCdsのα係数は0.982と高く,高い内部一貫性が認められた。また,BJTの結果によるレベル別に、ビジネスCdsの技能別平均値を算出したところ、全技能においてレベルが上がるにつれて平均値が高くなっていた。ビジネスCdsの四技能について,BJTの各部門との相関係数を算出したところ,どれも低い正の相関があった。次に,ビジネスCdsの項目別分析を行ったところ,今回の修正によって「聴く」で4項目,「読む」で7項目が改良され,「聴く」と「読む」においては,全項目でBJT模擬テストのレベルとビジネスCdsの回答結果との間に正の相関が見られた。ただし,今回追加した「話す」「書く」の技能については,それぞれ3項目ずつレベルとの間に相関が見られず,さらなる修正が必要であることが認められた。これらについてはさらなる検証が必要である。 本年度の調査の結果,本研究において示したビジネスCdsの改良の手続きが,妥当性の改善のために有用であることが確認された。今後は,被験者の母語や居住地域(国内・国外)によってビジネスCdsの回答に違いが生じているかどうかをDIF分析によって明らかにし,当該ビジネスCdsの妥当性をさらに高めていく予定である。
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