2011 Fiscal Year Annual Research Report
寺誌内文書と蔵人式による平安時代朝廷政治構造の研究
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22520662
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 全敏 信州大学, 人文学部, 准教授 (20313182)
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Keywords | 寺誌 / 古代文書 / 蔵人式 / 左大寺古文書 / 宇多天皇日記 / 観心寺 |
Research Abstract |
今年度は、特に『蔵人式』の集成と翻刻を中心に行った。 『蔵人式』について、まずは刊本を用いて逸文を集成した。『西宮記』『北山抄』『侍中群要』『貫首雑要抄』『政事要略』『禁秘抄』『新撰年中行事』『親信卿記』などがその対象となった。それぞれの写本系統を確認し、必要に応じて調査を行い、善本を求めて可能な限り逸文一条ごとに史料批判を行っていった。東山御文庫本『西宮記』は、巻次によっては、平安・鎌倉時代に遡る親本をもつものがあることが確認され、そこに引用されている『蔵人式』の校合に利することも確かめられた。なお『蔵人式』には、寛平・延喜・天暦の三種があることが知られているが、今年度の途中、ある条文が寛平のものか延喜のものか、意見を異にするご批判を賜ることができ、その精査も行った。その結論はいずれ報告したい。これに関連して、各史料に引用されている各『蔵人式』逸文が、それぞれ寛平・延喜・天暦のどれなのか、先行研究を踏まえつつ、あらためて検討し直した。来年度の公表を期したい。さらに、収集した蔵人式だけでなく、『延喜式』のなかにも蔵人に触れる「式」があることに注目し、蔵人所の成立について若干の考察を行った。 寺誌については、初年度の作業を継続した。特に今年度は、新たに発見した真言宗関係文書を分析することによって、観心寺のとそこに安置されている如意輪観音像の成立過程について、新たな知見が得られた。近く口頭発表する予定である。また収取した文書をもちいて、弾正台の制度史的研究も行い、論考2本をなして学会誌(査読あり)に投稿した(近刊予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『蔵人式』の逸文収集とその史料批判については、ほぼ順調に進んでいる。寺誌内の文書の収集と史料批判については少々手間取っているが、それでも予定範囲内で進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
原則として、計画にしたがって研究を遂行したい。研究成果の中間報告として、9月には延喜式研究会大会にて、12月には国際日本文化研究センターにて、それぞれ口頭報告を行う予定である。そこで頂戴したご意見を参考に、さらに研究を進め、また研究成果のよりよい公表方法を考えていきたい。
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