2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期・明治初期幕領・直轄県の地域社会変容に関する研究
Project/Area Number |
22520690
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山崎 圭 中央大学, 文学部, 准教授 (60311164)
|
Keywords | 近世史 / 近世・近代移行期 / 地域社会 / 幕領(幕府領) / 直轄県 / 地主小作関係 / 村落共同体 |
Research Abstract |
1.山田家および周辺村々(中野代官支配地)の調査 研究実施計画では、(1)地域の深刻な課題である洪水対策に地主山田家がどのような役割を果たしたか、(2)地主小作関係をめぐって山田家と周辺村々の関係がどのように変化したか、の課題をあげたが、(2)について研究成果を論文化することができた。そこでは、地主山田家と近隣の片塩村との間で18世紀半ばに発生した相論を分析し、地主山田家は複数の地主小作相論を通じて訴訟の際には証文・契約が重要であることを強く認識したこと、そのことが小百姓を保護しようとする村との間で対立を深める要因となったこと、しかし、小作証文そのものを通観すると必ずしも整備された証文が取り交わされたばかりではないことが明らかで、山田家の契約主義・合理主義も近世期には徹底していたとまでは言いがたいこと、等を確認した。(1)については史料の調査収集、検討を継続している。 2.中之条陣屋元村の調査 陣屋元村の村役人家文書(中島源雄家、健彦家)の調査を通じて、陣屋元村役人を中心に代官所手代や地域の各層との交流がかなり見えてきた(各地に転勤した手代からの村役人宛書状の存在、手代の子弟が村の寺子屋に入門、俳句・狂歌の交換・添削・奉納等をめぐる交流、等)。元中之条勤務で在江戸の手代からは他代官・勘定所や幕府の情報、江戸の世相などが中之条村に頻繁に伝えられている。同村の村役人で、寺子屋師匠でもある銀右衛門は、このように手代等との関係を持つと同時に、寺子屋師匠として、また俳諧サークルの判者・添削者として、陣屋元村の村役人(郡中代の分家)として周辺地域の様々な人々と関係を持ち、両者の接点となっていたこと等が具体的に確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を一つずつ論文にまとめていくには若干の時間を要するので順番にすすめているところであるが、研究目的にあげた諸点については、それぞれ史料の調査収集が予定通り進んでおり、研究の基礎条件がかなり整ってきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り計画に従って研究を進めていく。現段階では当面の研究に必要なある程度の史料は収集できているが、地域に残された史料はそれ以上にたいへん豊富なものがある。この機会にできる限り調査収集を行って、今回の研究だけでなく、次の研究にもつながるような論点の掘り起こしに努めたい。3年目(今年度)、4年目(来年度、最終年度)にも積極的に地域における史料調査を実施していく予定である。
|