2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520726
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Research Institution | 財団法人東洋文庫 |
Principal Investigator |
永田 雄三 (財)東洋文庫, 研究部, 研究員 (20014508)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | アーヤーン / カラオスマンオウル家 / チフトリキ / トルコ / マニサ地方 / 徴税請負制 / 資産台帳 / ワクフ |
Research Abstract |
本研究は、トルコの地方名士(アーヤーン)に関する研究の一部である。地方名士に関する研究は、トルコに限らず、オスマン帝国支配下に置かれていた中東およびバルカン地域の18世紀から19世紀における政治・社会・経済・文化の全般におよぶ最も重要なテーマであり、当該地域に関する地域研究の歴史的前提である。アーヤーンに関する従来の研究は、かれらの富と権力の基盤は、地方官職と不可欠な関係にある徴税請負制による利潤と農産物の市場化過程の掌握にあるとされてきた。これにたいして筆者は、これに加えてチフトリキと呼ばれる大農経営とワクフと呼ばれるイスラムに固有な寄進制度にもとづく、地域で獲得された富の地域社会への還元行為の重要性を指摘してきた。 本研究は以上のような問題提起をさらに確実にするべく、1845年に実施された「資産台帳」のうち、マニサ県マニサ郡にかかわる合計66冊の「資産台帳」に記載された約3万人分のデータを分析した。その結果、タンズィマート改革(1839-76)による中央集権支配の地方社会への浸透と、1838年の英土通商条約を契機とした国際貿易の拡大とによってもたらされた急速な社会変容にもかかわらず、本研究が直接の対象とするマニサ地方随一のアーヤーン家系(カラオスマンオウル家)の当該社会における影響力は、チフトリキ大土地所有をもっとも有力な基盤としてなお存続し続けていたことを確認することができた。だが、一方では、たばこ、綿花、アカネ(トルコ赤染料の材料)などの商品作物の栽培と商品化を基盤とした新たな社会層の台頭もみられ、アーヤーン層の地域社会におけるプレゼンスが次第に相対化されつつある実態も観察された。本研究の成果の一部は東洋文庫の英文紀要(70号)で国際的に報告された。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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