2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520734
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
深澤 安博 茨城大学, 人文学部, 教授 (60136893)
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Keywords | 20世紀スペイン / 植民地戦争 / スペイン領モロッコ / 原住民統治 / 原住民兵 / 軍アフリカ派 |
Research Abstract |
当該年度の研究は、第1に、20世紀初頭からモロッコで展開されたスペインの植民地戦争ではどのような人々が兵士として戦っ(わされた)たのか、第2に、植民地戦争との関連でスペインの兵役制度がどのような変遷を辿ったのか、それは同時代のスペイン人にとってどのような意味を持ったのか、第3に、植民地戦争を遂行したアフリカ派軍人たちがなぜ20世紀スペイン政治において決定的意味を持つに至ったのかを解明することを目的とした。 1920年代にモロッコで植民地戦争が本格化すると、徴募兵とともに特権兵士制度(納付金兵士)も動員された。とはいえ、徴募兵も特権兵士も、さらに政府自身や政界の多くも、むしろ「原住民」兵と志願兵を基礎として植民地戦争を遂行することを主張した。しかし志願兵への応募者が少なかったので、結局は多くの「原住民」兵が動員されることになった。 モロッコでの植民地戦争は1926年後半から「平定」期に入る。植民地戦争を遂行しかつそれに勝利したアフリカ派軍人が事実上スペイン領モロッコ植民地を統治することになった。彼らは厳格な「原住民」統治政策を導入した。また、モロッコ植民地はスペイン本土のための軍事基地の役割を果たすことになった。これを基礎にして、アフリカ派軍人たちはスペイン軍の中で有力になったばかりか、本国の政治・社会においても影響力を持つ存在となった。 以上の研究は、スペイン陸軍史料館(スペイン、マドリード)にマイクロフィルムで所蔵されているモロッコ植民地「平定」関係文書の閲覧と検討によって可能となった。さらに、スペイン国立図書館の旧アフリカ資料室での資料の閲覧、またスペイン陸軍史料館に付設されている図書室・マドリード市立新聞資料館・スペイン国立図書館での3新聞(『軍人通信』、『スペイン軍』、『陸海軍』)と『植民地軍雑誌』の閲覧・検討によって可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、20世紀初頭から主にモロッコ保護領で展開されたスペインの植民地戦争ではどのような人々ー一般徴募兵か、志願兵か、兵役一部免除金を払った特権兵士か、あるいは「原住民」兵かーが兵士として戦っ(わされた)たのかを明らかできた。 第2に、植民地戦争との関連でスペインの兵役制度がどのような変遷を辿ったのか、それは同時代のスペイン人にとってどのような意味を持ったのかを解明できた。 第3に、兵役制度に支えられ、またそれによって徴募されたスペイン人を動員することによってこの期に植民地戦争を遂行したアフリカ派軍人たちが、なぜ、20世紀スペイン政治において決定的意味を持つに至ったのかを、彼らの権力志向的なイデオロギーとともに明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
モロッコ植民地の「平定」期の軍事政策と「原住民」統治政策、モロッコにおける植民地軍の事実上の形成、また第2共和政期のモロッコ植民地の意義とスペイン政治・社会における軍アフリカ派の役割についての研究を推進する。 スペイン陸軍史料館に所蔵されているモロッコ植民地「平定」関係文書の閲覧と検討を引き続き進める。ただ1930年代の文書はまだ公開されていないので、これを補うために総合公文書館(スペイン、アルカラ・デ・エナーレース)とアビラの陸軍史料館の文書も閲覧する必要がある。
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Research Products
(3 results)