2010 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代前期における小型古墳の展開と政治秩序の形成に関する研究
Project/Area Number |
22520763
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
滝沢 誠 静岡大学, 人文学部, 教授 (90222091)
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Keywords | 古墳時代前期 / 小型古墳 / 墳墓要素 |
Research Abstract |
本研究は、古墳時代前半期(前期~中期前半)の小型古墳にかかわる墳墓要素を汎列島規模で検討することにより、それらの小型古墳被葬者間を結ぶ広域的な結びつきの存在を明らかにすることを目的としている。また、そうした作業をつうじて、大型古墳(有力首長)の分析とは異なる視点から、古墳時代前半期における政治秩序の形成過程を読み解くことを目指している。 以上の目的を達成するためには、対象資料の詳細な内容を把握するための資料調査を実施する必要がある。本年度は、静岡県麓山神社後古墳(東京国立博物館)、岐阜県龍門寺古墳群(岐阜市博物館)、同舟来山古墳群(本巣市教育委員会)、奈良県磐余池ノ内古墳群(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館)などの出土遺物について資料調査を行った。また、本研究に関連する調査として、静岡県春林院古墳出土遺物(静岡大学)の整理を進め、所属研究機関からの配分経費を使用して、その成果報告書を刊行した。 こうした調査と併行して、古墳時代前半期の墳墓群に関する文献収集とパソコンへの情報入力作業を行った。これは、小型古墳の諸要素を分析していくための基礎作業として欠かせないものであり、本年度は主な研究対象とする東海地方の資料を中心に作業を進めた。 本年度の研究活動における重要な成果の一つは、研究対象とする資料の年代的位置づけについてあらたな知見を得ることができた点である。とくに、従来古墳時代前期に位置づけられることの多かった奈良県磐余池ノ内古墳群は、調査の結果、古墳時代前期末~中期前葉に造営期間を有するものとみられるようになった。これは、岐阜県龍門寺古墳群や静岡県若王子古墳群の主たる造営期間と一致しており、今後それらの古墳群の成立事情を考察していくうえで注視すべき年代的範囲を示すものとして重要な意味をもつ。
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