2012 Fiscal Year Annual Research Report
写真資料の分析を通してみた植民地朝鮮における考古学的調査の再検討
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22520764
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉井 秀夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (90252410)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 考古学 / 朝鮮史 / 写真 |
Research Abstract |
本年度の具体的な研究の進行状況は以下の通りである。 第1に、朝鮮古蹟調査関連写真の集成および検討については、昨年度に引き続き、東洋文庫・梅原考古資料に所蔵されている慶州金冠塚関連資料(写真・図面・原稿など)の閲覧・検討作業を進め、昨年度整理した京都大学考古学研究室所蔵資料および報告書掲載写真図面との対象作業をおこなった。その結果、1921年以降の遺物の整理・実測・写真撮影の過程をおおまかに復元することができた。特に、報告書の図版・本文上冊が刊行された1924年においても、実測・写真撮影作業が継続されていたを明らかにしたことは、当時の調査体制の実態を知る上で重要である。また、京都大学考古学研究室に所蔵されている朝鮮古蹟調査関連写真のリスト作成を進めた。 第2に、慶州の遺跡関連写真の集成および検討については、慶州の遺跡に関する写真の中でも、特に絵ハガキについての検討を進めた。同一地点を撮影した写真を比較して撮影順序を推定すると共に、絵ハガキの組み合わせや製作・販売者との関係を検討した。その結果、1910年代・1920年代においては、東洋軒写真館および慶州古蹟保存会が絵ハガキを撮影・製作したのに対して、1930年代には大正写真工芸や日之出商行などの大手印刷会社で製作された絵ハガキが、慶州周辺の複数の写真館・ホテルなどで販売されるようになったことを明らかにした。 第3に韓国での調査については、成均館大学校博物館で開催された特別展『ガラス原板に写った韓国の文化遺産-植民地朝鮮の古蹟調査-』および漢陽大学校博物館で開催された特別展『韓国建築文化財 復元と創造の境界(警戒)』を見学し、博物館学芸員と、韓国での写真古蹟関連資料の調査研究についての意見交換をおこなった。また、慶州の石窟庵三重塔・掘仏寺四面石仏・栢栗寺・瓢岩・掛陵などで、現地と絵ハガキをはじめとする写真との照合作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22・23年度における基礎的研究をもとに、平成24年度においては、植民地朝鮮において撮影された古蹟関係写真の具体的な分析を進めることができた。今年度においては、写真を通して金冠塚の遺物整理過程を復元したことと、慶州の絵ハガキの変遷過程についての大まかな見通しを立てることができたことが大きな成果である。その一部については、すでに口頭発表をおこなっており、それをもとに来年度は研究の総括をおこないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの3年間の研究により、基本的なデータ集成およびその分析・考察作業は予定通り進んでいる。平成25年度は、これまでの検討成果を、論文・成果報告書にまとめる作業に集中していきたい。報告書は、(1)朝鮮古蹟調査事業報告書における写真とその変遷、(2)写真資料を通してみた慶州金冠塚の調査・整理過程の復元とその歴史的意義、(3)慶州の遺跡関連写真の変遷とその特質、という3つの主題を柱として、これまでの研究成果をまとめる予定である。また、これまで収集したデータを、他の研究者も使えるような形で公開する方案を検討する。
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Research Products
(6 results)