2011 Fiscal Year Annual Research Report
パキスタン・インドの都市搾乳業の展開と屠場に関する研究
Project/Area Number |
22520802
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
中里 亜夫 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (60044343)
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Keywords | インド / デリー大都市圏 / ムンバイ大都市圏 / 都市搾乳業 / 屠場 / アーレー・コロニー / デイリー・コロニー / 南アジアの酪農 |
Research Abstract |
第二年次は、インドの都市搾乳業と屠場の現地調査及び学会報告を実施した。現地調査は、調査準備の関係から、予定していたパキスタン・ラホールを中止し、インドのデリー・ムンバイ両大都市圏に変更して実施した(デリー:2012/2/27-3/8。ムンバイ:2012/3/9-3/16)。 (一)デリー大都市圏には、MCD(Municipal Cooperation of Delhi)により10ヶ所の搾乳コロニー(Dairy Colony)が設立(1975-76年)され、市民に生乳供給を行っている。その規模及び詳細なデータは入手不可で、アシスタントを雇用し、5ヶ所のコロニーの概査を実施。 (二)ムンバイ大都市圏には、ボンベイ政府により設置されたアーレー・コロニー(Aarey Colony)が都心から北方約40kmの位置に、約3000エーカーのコロニーがある。そこには30酪農場があるが、詳細なデータは入手不可。アシスタントを雇用し、4ヶ所の経営主からのヒアリングを実施。また、アーレー周辺の民間のコロニーを4ヶ所を訪ねヒアリングを実施。なお、屠場に関しては、未調査。 以上の二ヵ所の大都市圏における搾乳業に関して、今回の調査で明らかとなった以下の5点を指摘しておく。(1)都市化の影響が強く、特に土地の高騰による搾乳業の停滞・後退が顕著。他業種の侵略(部品・パール・自動車関連、貸アパートの建設や不動産ビジネス等)が進展。(2)デリーでは、協同組合系列のマザー・デイリー経営のミルク販売所に押され、ミルクの生産販売や加工まで行う搾乳業者の存在。(3)ムンバイでも同様に、都市化の進展(地価の高騰等)の影響で、アーレーの酪農場の場合でも、ミルクの生産・販売及び加工にまで経営を拡張している例が多く、また市内の搾乳業者も同様で、都市搾乳業の生き残りを図っている状況である。(4)両大都市圏において、ジョイント・ファミリー的搾乳業経営の限界にきている。(5)周辺住民からの追い出し圧力とコロニー内のスラム化が進行。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定したデータの入手が出来ないことが、最大の理由である。当初、ある程度は予想していたが、都市部での個人経営調査には、予めオーソライズされた政府・畜産系の調査許可書の入手が必要な為に、予定していた内容の調査が出来ていない。また、パキスタンの場合、ビザの取得が複雑となり、時間を要する状況で在り、それに対する対応が出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)インドに関しては、現地でのヒアリングに一定の困難を伴うが、インターネヅト、地図、新聞及び文献によるデータ収集が可能である。それで、最終年度に再度インドに渡り、データ収集と現地調査を行うことで、研究目的を達成することは可能であろう。同時に屠場に関するデータ収集も進めたい。 (2)パキスタンに関しては、ビザの取得とラホール調査及びカラーチの補足調査を要する。幸いに、ビザ取得はクリア出来る見通しである。調査に関しては、前回の調査で詳細な経営調査は困難と判明したので、最終年度は大都市圏の搾乳業者のコロニー及び近郊酪農村の調査で、いわば酪農業の地帯構造を明らかにすることに力点を置くことに集中したい。最終年度であり、これまで屠場に関する一部資料の収集は終えているが、本格的な屠場調査は出来ていないので、カラーチを中心にして可能な限りデータ収集と現地調査でのヒアリングで都市圏での屠場の存在意義を明らかにする調査を実施することとなる。
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Research Products
(2 results)