Research Abstract |
2012年度は,首都圏の超郊外地域にあたる千葉県の勝浦市と御宿町において1980年後半以降,外房臨海部に大手不動産により開発された別荘型住宅地(M勝浦と御宿GT)を事例に,居住者へのアンケート調査を通して,定住化・高齢化の実態とシニアタウン化による諸問題の一端を明らかにした。 M勝浦(104ha,1992年分譲開始)は,南カリフォルニアをイメージした別荘地で,2011年末現在,分譲・建築戸数が658戸,うち定住が243戸(定住率37%)で,老年人口比43.3%(勝浦市32.8%)と高齢化が進展している。「夷隅レクリエーション開発(B地区)」に開発されたGT御宿(167ha,1988年分譲開始,1990年に地区内に有料老人ホーム開設)は,2011年度末現在,分譲・建築戸数が932戸,定住508戸(定住率54.5%)の住宅地で,有料老人ホーム入居者を除く老年人口比は,48.8%(御宿町39.7%)にも達している。両住宅地とも「房総リゾート開発」の一環として,臨海部に民間資本により開発された「バブルの遺産」ともいうべきリゾート型別荘住宅地で,首都圏から購入・転入した富裕層を中心とする住民で構成されている。しかし,定住化とそれに伴う超高齢化の進展が日常生活を送る上で様々な問題を惹起している。定住者は,海に近く,暖かい気候と豊かな自然環境を好むという共通した価値観を有するリタイア族が中心で,地域に歴史のない郊外住宅地と同様,顕示的に管理された庭や建物,そして住民やその生活スタイルも「商品」としての住宅地を演出し,その価値を保持している。リタイア族の転入は,彼らの価値観や生活スタイルにおいて,第二の人生を楽しむための「アメニティ移動」であったと考えられる。彼らはいわば「趣味縁」でゆるく結ばれたコミュニティを形成しているが,終の棲として選択されたが故に,快適なスローライフを満喫できる環境に満足しながらも,交通や買い物の不便さや,将来への不安などリゾート型の超郊外シニアタウンの危うさも指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択時の諸事情により平成22年度の夏に本格的な調査ができなかったことに加え,東日本大震災とその後の社会の混乱などで,22年度分の調査を23年度に持ち越すことになったことが「やや遅れている」とした最大の理由である。23年度からは1年遅れながら,当初予定していた千葉県内の超郊外住宅地の事例調査を2か所において居住者へのアンケート調査を実施することがきたので,24年度には当初の目標を達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度に当たるため,当初研究目的であげた3つの目的のうちの1つ,「居住空間の質的価値を形成する緑地景観やその維持管理の実態分析」については,新たに超郊外地域における持続可能なリタイアメントコミュニティとは何かという視点も加えて明らかにしたい。平成24年度は23年度に行った2か所の別荘型住宅地の住民に対して,さらに詳しい聞き取り調査を実施すると同時に,アメリカにおける郊外住宅地の比較も加えながら,静岡県内で定住化と高齢化が同時に進行している別荘型住宅地を事例にアンケート調査を含めた研究を進める予定である。
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