2011 Fiscal Year Annual Research Report
カナダにおける日系ガーディナーの歴史的展開と他民族との関係性をめぐる研究
Project/Area Number |
22520808
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
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Keywords | カナダ / 日系 / 移民 / ガーディナー / 民族 |
Research Abstract |
本研究は、カナダにおける日系(日本人)ガーディナー(Gardener:庭園.造園業)の歴史的展開を20世紀初頭から4期にわけ、民族産業(エスニック・ビジネス)としての成立とその再編について考察する。特に、ブリティッシュ・コロンビア(以下、BC)州を中心に、当地への日本人(日系人)の移住、アメリカ合衆国・ワシントン州との人的・技術的交流にともなう庭園・造園技術の移動と定着、中国・インド・ベトナム系などとの関係について、歴史地理学的アプローから明らかにする。 平成23年度では、第1期にあたる1907年から1908年にかけて、ビクトリアとバンクーバーで日本庭園の建設を模索した人々の活躍を明らかにした。前者では、横浜出身の岸田伊三郎が土地の賃貸や労働者の確保など諸条件が整っていたゴージ・パークに日本庭園を造園した。それに対し後者では、前年の1907年に起こったバンクーバー暴動をはじめ、当時のバンクーバーでは日本人に向けられた白人の視線は厳しかった。そのなかで、後に生物学者・社会主義者として名を馳せる山本宣治が、日本庭園株式会社の事務主任として奮闘した。しかし、日本で園芸経験があるとはいえ20歳にも満たない彼に設計や造園以前の開墾手続きまで任せるという事業は、失敗に終わった。 また、第2期についても、バンクーバー沖のボゥェン島にあった日本庭園の存在が明らかになった。1912年から海運会社がレクリエーション施設の建造を始め、そこには、「喫茶室」や「花嫁の小径」「花嫁の滝」とよばれた遊歩道などが設けられた。これらの日本的な施設を造ったのが佐賀県出身の古賀大吉であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、カナダにおける日系ガーディナーの歴史的展開を4期にわけて研究を進めている。原則的に、第1期から第4期へと時代順に研究を遂行するが、資料やインフォーマントの都合によって、適宜、変更される。平成22・23年度は、最も重要な第2期を中心に研究を行ない、23年度には第1期の研究成果も単行本所収論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの日系ガーディナーが活躍していた第2期について、『加奈陀発展大鑑・付録(1922)』・『加奈陀在留邦人名簿(1926)』・『在加奈人人名録(1941)』とBC Directoryを併用し、同期の「カナダ日系ガーディナー・データベース」を完成させる。第3期についても、1959年当時のBC Directoryから、データベースの作成に着手する。なお、第3期におけるアメリカ・ワシントン州シアトルとの技術交流については、シアトルへの調査が24年度に変更する場合もあるが、臨機応変に対応できる体制は整っている。
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