2012 Fiscal Year Annual Research Report
カナダにおける日系ガーディナーの歴史的展開と他民族との関係性をめぐる研究
Project/Area Number |
22520808
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カナダ / 日系 / ガーディナー / ボゥーエン島 / 古賀大吉 |
Research Abstract |
カナダ日系ガーディナー史において、1920年代から太平洋戦争開戦にあたる第2期では、ブリティッシュ・コロンビア州のジョージア海峡に浮かぶバンクーバー沖の小島にも日本庭園が建造されていた。ホーシュ・ベイ沖のボゥーェン島には、同類の施設が建造されていたのである。 周囲およそ10kmのボゥーェン島には、1912(大正元)年から海運会社のターミナル会社がレクリエーション施設の建造を始めた。フェリー発着場周辺の東岸には6ヶ所のピクニック場を中心に、テニスコートや屋外ボーリング場などの娯楽施設が設けられた。その1つに、Tea roomがあった。 この「喫茶室」をはじめ、いくつかの施設を造ったのが古賀大吉である。1878(明治11)年11月15日、大吉は熊吉・シモ夫妻の長男として佐賀県三養基郡北茂安村大字白壁(現・佐賀県三養基郡みやき町)に生まれた。27歳の1906(明治39)年に彼はカナダへ渡航し、多くの日本人と同様にサケ缶詰産業や製材業に就いたようである。 古賀大吉が設計・建設した「喫茶室」は、1920年代には身近な行楽地としてバンクーバーから多くの人々が訪れたようである。ただし、彼の最大の業績はディープ湾に連なる潟湖に注ぐ小川沿いの「花嫁の小径」とよばれた遊歩道と、その小川を跨ぐ「花嫁の滝」の建設である。大吉は発電のために堰止められた小川を活用し、その川面に3重の太鼓橋を架け、堰止められた穏やかな水面に弧状の太鼓橋が映る工夫を施したのである。 ボゥーェン島公文書館には、彼が建築設計士として従事し、清水鶴七と熊本県出身の渡邊正行が大吉のもとでガーディナー(庭園師)として従事していた記録が残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究では、①カナダ日系ガーディナー史における時期区分の再検討、②各時期における最適な事例の実証研究、③庭園業から造園業への発展に関わる日本・カナダ・アメリカとの人的・技術的交流の解明の遂行を到達目標としている。3年目を終え、4期に時期区分することの妥当性をほぼ得ている。事例研究についても、第1・2期については完了し、3・4期についても基礎的な資料は収集している。
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Strategy for Future Research Activity |
第2次大戦以前の第1・2期において、日系ガーディナーで最多を占める鳥取県出身者については、入手済の鳥取県出身者の旅券(複写版)を利用する。氏名・生年月日・渡航年月日・渡航理由・呼寄せ者などから、日系ガーディナーの輩出・連鎖移住の地域構造を明らかにする。鳥取県立図書館所蔵の移民資料の閲覧・複写、とくに輩出地の米子市史編纂室とはキー・パーソンの発見への協力体制が整っている。 戦後の第3・4期における日本・カナダ・アメリカとの人的・技術的な交流や、インド系の雇用形態についても、バンクーバー日系ガーディナーズ協会での基礎的なアンケート調査を終えている。今後は、より具体的なインタビュー調査を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)