2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520835
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 公三 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70159242)
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Keywords | マルセル・モース / フランス人類学 / 民族誌 / 植民地 / 協同組合 |
Research Abstract |
フランス人類学の定礎者、マルセル・モースの現代人類学形成史、現代思想における位置をあきらかにしその主要なテクストの日本語の定訳を刊行するという目的は前年度と変わらない。昨年度は、本科研プロジェクトに先立つ、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所における「マルセル・モース研究-社会・交換・組合」の成果の継承のうえに、連携研究者による最初の中間総括として「マルセル・モースの世界」(平凡社新書)刊行の準備を鋭意進めたが予定が遅れて、2011年5月刊行となった。この論文集では直弟子である岡本太郎がモースからひきついぎ日本で開花させたものを一つの軸として、モースの人類学を提示し、その知的形成の背景を探り、さらに学問的活動の初期(シルヴァン・レヴィによるサンスクリット学への薫陶、デュルケームからの指導)、後の宗教研究分野や「贈与論」におけるオリジナルな研究の評価、両大戦間期におけるモースの「ナシオン」研究の評価など、現在の研究水準を踏まえた概括的検討がおこなわれた。この成果を踏まえて今年度は、当初予定よりは遅れたものの、モースの主要業績の定訳の刊行にとりくんだ。すでに細部まで構成案のできた「モース著作集」全六巻(平凡社刊)として、編年のかたちをとるため、各巻(I:1899-1904、II:1904-1914、III、1920-1925、IV:1925-1929、V:1930-1948、VI:1926-1947)ごとに、各時期におけるモースの研究の主題、関心の方向等をあきらかにしてゆくことも研究の重要な課題である。 年度内に第一分冊、第二分冊刊行の予定であったが、第一分冊に入る代表作「贈与論」の校訂が予想以上に難航し、現在初校をおこないほぼ終了した。すでに何度か訳されている著作だがこれまでは誤訳も散見され、また「社会学年報」の初出時の原稿を基本とする決定訳を目指し細心の校訂作業をおこなったためである。また両大戦間期の欧米経済の動態とさまざまな困難(大恐慌、ロシア革命の勃発等)への一つの回答として「贈与論」を読み解くという作業に予想以上の時間が必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「概要」にも記したが、「贈与論」決定訳の作成のための初出原稿による校訂、訳稿の初校、「贈与論」執筆時の欧米の同時代的社会経済状況との突き合わせ、歴史的文脈の解明に予想以上の時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究者の学内役職の変更により、平成24年度は昨年度よりは研究時間が若干増加すると期待しており、また連携研究者の海外での職務の終了による帰国によって共同作業が回復され、予定されたモース著作集の第一分冊、第二分冊、第三分冊の刊行の作業は進捗すると考えている。
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