2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代イタリアにおける刑事法文化と社会構造との史的相互連関に関する基礎的研究
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22530003
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小谷 眞男 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (30234777)
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Keywords | イタリア / 法文化 / 刑事法 / ベッカリーア / 死刑 / 法と文学 / 司法統計 / 法典編纂 |
Research Abstract |
平成22(2010)年10月から平成23(2011)年6月まで、18世紀後半から19世紀末にかけてのイタリア刑事法文化史を同時代の社会構造や文化的背景との関連に留意しつつ研究した。具体的には、1764年にトスカーナ大公国で刊行され全欧的ベストセラーになったチェーザレ・ベッカリーアの記念碑的著作Dei delitti e delle peneの法思想を、最新の全集版テキストのイタリア語原文に基づいて厳密に分析した。次いで19世紀初頭から1861年のイタリア統一にかけての「リソルジメント期」におけるイタリアの刑事法文化を、同時代に半島各国で公刊された司法統計を文書館や図書館で閲覧・複写・分析することによって考察し、またその他の各種刑事法学関連の文献資料類にもとづき追跡した。さらに、1861年の統一イタリア王国成立後の刑事法分野における最大の国民的課題であった統一刑法典編纂事業を、司法省中央図書館所蔵の膨大な草案審議録資料類の解析結果にもとづきながら、かつ同時代の社会構造や文化との関係に留意しつつ、綿密に再構成する作業をおこなった。以上の研究成果の一部を、共編書収録論文「未完のプロジェクトとしての〈イタリア法〉…統一刑法典編纂過程の分析から」(北村・小谷編『イタリア国民国家の形成』所収)、全集版テキストにもとづくベッカリーアの作品の日本初の翻訳書『犯罪と刑罰』の刊行とそこに付した詳細な訳注および訳者解説、雑誌論文「ピノッキオの法文化」、そして単行書収録論文「リソルジメント」(伊藤・北村編『近代イタリアの歴史』(印刷中)所収予定)というような形で順次発表した。いずれも今後イタリア法文化の研究が展開していく際の確固とした基礎をなすことになるであろう貴重な研究成果と言える。
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