2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代イタリアにおける刑事法文化と社会構造との史的相互連関に関する基礎的研究
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22530003
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小谷 眞男 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (30234777)
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Keywords | 国際情報交換 / ベッカリーア / 市民社会論 / 犯罪論 / 家族論 / 刑事法文化 |
Research Abstract |
2010(平成22)年度末にベッカリーアの『犯罪と刑罰』の全訳(訳注・解説・年表付き)を東京大学出版会から刊行することができた(2011年度に入ってから専門誌等の複数の学界動向レビューで言及)。国際的標準となっている全集版(1766年に刊行された原著第5版に基づく校訂版テキスト)からの本邦初の全訳刊行という成果にもとづいて、2011(平成23)年度は、ベッカリーアの犯罪論・刑罰論と市民社会論・家族論のあいだの関係についての本格的な解析に着手した。この際、モンテスキュー、ヴォルテール、ディドロ、ルソー、ホッブズ、ロックなどだけではなく、従来の日本における研究では等閑視されてきた功利主義思想家エルヴェシウス、人文主義者F.ベーコン、自然法思想家グロティウスとの直接的影響関係に着目して分析を進めた。また、ミラノ啓蒙グループとベッカリーアとの関係についても、よく取り上げられるピエトロ・ヴェッリだけではなく、むしろ生粋の法律家でありローマ法学者でもあったアレッサンドロ・ヴェッリとの相互影響関係に着目して分析を深めた。この作業は当然にもローマ法史の見直しを要請することになり、研究の射程は大幅に広がった。さらに、ベッカリーアも関与したミラノ公国における刑法典編纂事業の史料も引き続き収集し、同時代の実定法サイドへの影響も測定した。この延長線上で、ロマニョージやメッセダリアなどの19世紀ロンバルディーア市民刑法学派にいかにベッカリーアの提起した問題が継承されたかについても一次資料に基づいて検証することになった。この際、近年のイタリア法史研究の最新成果・イタリア人研究者との研究交流からも大きな示唆を受けた。以上のように、2011年度は、イタリア刑事法文化史の基礎的な作業を着実に進展させた。その成果は2012年度以降に順次公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年度末に刊行した成果にもとづく基礎作業を着実に進めることができた。具体的成果の公表については、2012年度以降に具体的な予定が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き分析作業を着実に進め、その成果を順次公表していく。
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