2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530029
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阪口 正二郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60215621)
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Keywords | 憲法訴訟 / 憲法 / 利益衡量 / 違憲審査基準 / 比例原則 |
Research Abstract |
本研究は、(1)比較憲法学の観点から、アメリカの違憲審査基準とドイツの比例原則を対象として両者が共有していると考えられる「利益衡量」に焦点をあてて、違憲審査基準と比例原則の異同を、(1)それぞれが有する論理構造、(2)それぞれが生み出されてきた歴史過程、(3)それぞれが前提にする権利観、違憲審査の役割についての考え方の違いという観点から分析し、異同を見定めた上で、(2)憲法理論の観点から、両者が共有していると考えられる「利益衡量」について、政治哲学の議論を参考にして権利と利益衡量の関係を分析し、憲法判断過程における利益衡量の意義と限界を考察しようとするものである。平成22年度は、最初に、アメリカの違憲審査基準とドイツの比例原則の異同を明らかにする作業を行った。違憲審査基準と比例原則がともに憲法上の権利や価値にウェイトを置いた利益衡量を可能にするという共通点を有しているものの、違憲審査基準と比例原則とでは、裁判官による利益衡量の枠づけ方が異なっており、違憲審査基準では審査基準を二つないし三つに階層化することで裁判官による利益衡量を制約しようとするのに対して、比例原則においてはこうした形での枠づけを拒否して個別の事例の事情に即した裁判官による利益衡量を可能にする違いがあること、そしてこの違いの背後にアメリカでは歴史的に利益衡量という考え方自体に負のイメージが付きまとっているという歴史的な事情があることを明らかにした。第二に、違憲審査基準であれ、比例原則であれ、支配的な考え方ではこれらは「シールド」としての権利観に立ち、政府の行為の帰結を統制するものとして理解されているが、「切り札」としての権利観に立ち、政府の行為の理由を統制するものとして違憲審査基準や比例原則を再構成できる可能性を立証した。
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Research Products
(4 results)