2013 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素排出量取引の市場における競争制限と排出量貿易に関する包括的研究
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22530055
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
沢田 克己 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40187290)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 排出量取引 / 温室効果ガス / ドイツ / 欧州競争法 / 競争制限 |
Research Abstract |
EUの排出量取引指令は、構成国に2003年12月31日までにそれを国内法化することを命じた。ドイツにおける国内法化は3つの部分に分けて行われた。すなわち、①連邦インミシオン保護法による施設に関する排出量取引指令の国内法化のための法規命令の制定、②「温室効果ガスの排出枠の取引に関する法律」(以下、「温室効果ガス排出枠取引法」又は「TEHG」という)の立法、及び③「2005年から2007年までの割当期間における温室効果ガス排出枠に関する国内割当計画に関する法律」(以下、「2007割当法」という)の立法である。 これらの立法により、排出量取引の対象、排出認可、排出量の算定及び排出量報告義務、排出枠割当、排出枠配分等について詳細な定めが置かれた。ドイツについて注目すべきなのは、施設プールの形成が認められていたことである。排出量取引指令28条を受けたTEHG24条1項1文は、規制当局は受託者(Treuhänder)が同条2項所定の義務を満たすことを保証し(gewährleisten)、かつ、欧州委員会が異議を唱えない場合、申請に基づき同じ活動分野に属する責任者に施設プール(Anlagenfonds)を形成することを許していた。施設プールはドイツにおいて製鉄、石油精製等の分野で数件形成された。しかし、プールにおける受託者と操業者の間の契約には多くの条項が盛り込まれ、そこから多くの法的問題が生ずるおそれがある。競争法との潜在的な抵触もその一つである。その結果、2009年4月の改正によって28条は改正され、第二フェーズ終了後はプールを維持することができないこととされた。30条2項j号により、欧州委員会による報告書の対象とされているにすぎない。 施設プールについては欧州委員会が2003年指針において欧州競争法との関係について警告するなど、排出量取引と競争政策の抵触のあり得る1局面である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツにおける排出量取引制度を実施する制度全般について、その制度的枠組みと内容を明らかにし、かつ、競争法との抵触の具体例を発見することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成22年度から25年度の研究により、国連気候変動枠組条約、EUのETSの枠組と内容、イギリス独自の排出量取引制度とEU指令を国内法化したイギリスの制度の解明、EU指令を国内法化ドイツにおける排出量取引制度を解明することができた。これらにより、国内炭素市場における排出量取引と競争制限の関係についての研究の成果を挙げたといえる。 これに引き続き本研究は国際市場における排出量取引と貿易制限の関係に展開し、平成26年度において、排出量の自由な国際取引に対してWTO加盟国政府が何らかの制約を課す場合のWTO諸協定の適用のあり方について研究を行う。
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