2011 Fiscal Year Annual Research Report
不良債権処理スキームの会社法学的考察?デット・エクイティ・スワップを中心に?
Project/Area Number |
22530090
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松嶋 隆弘 日本大学, 法学部, 教授 (20287569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 聡一 日本大学, 法学部, 教授 (40337126)
大久保 拓也 日本大学, 法学部, 准教授 (90333103)
鬼頭 俊泰 八戸大学, ビジネス学部, 講師 (40512075)
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Keywords | 不良債権処理 / デット・エクイティ・スワップ / 債務の株式化 / 負債の劣後化 / リストラクチャリング / 事業再生 / アレンジメント / 会社法 |
Research Abstract |
1.平成23年度は、海外調査研究を目的としていたところ、研究代表者は英国に、研究分担者(工藤、鬼頭)は米国にそれぞれ赴き、関連文献の調査・情報収集にあたった。その結果、(1).日本法においてデット・エクイティ・スワップ(DES)は、根拠法令が会社法にあるものの、議論はもっぱら課税関係につきなされているが、英国においては、もっぱら倒産法における新たなトレンドとして位置づけられていること、(2).英国においては、米国流の事業再生(Chapter11)をどう受容するかが議論されており、この点でわが国と類似する状況が見られること、(3).他の法領域(例えば集合債権譲渡担保)においては、事業再生にあたっての新旧スポンサー間の「せめぎ合い」がみられるところ、わが国のDESにおいては、かかる「せめぎ合い」が、新旧株主間のシナジー分配として顕れること、(4).わが国のDESにおいては、100パーセント減資により既存株主への価値の移転を防ぐが、英国では、DESにより発行する「種類株式」の設計により対処すること、を認識することができた。また、(5).DESにより債務を株式に振り替えた上で、新旧株主間の公平を議論することは、現物出資法制の役割を見直す必要を示唆しているとともに、(6).債権者保護の意義・あり方について、会社法と倒産法との間の「調整」「仕分け」の必要を強く示していることも理解できた。 2.上記のうち、(1).(3).については、研究代表者による私法学会個別報告(「会社法のもとにおけるデット・エクイティ・スワップ」日本私法学会第75回大会)で、(5).については、研究代表者による論文(「EU会社法と日本の事業体法制~欧州私会社(SPE:Societas Privata Europaea)を中心として~」法学紀要53巻(平成24年)245~273頁)で、それぞれ当該認識の一端が公表されている。その余の項目については、次年度に、かかる認識を元に、研究代表者及び研究分担者との共同作業がなされ、「肉付け」 がなされていくことになろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前記「研究実績の概要」については、交付申請書に記載した事項をほぼ具体化したものである。研究代表者に関しては、研究業績の公表等初期の目標を達成したものの、研究分担者においては、いまだ研究の成果の公表にまでは至っておらず、それらを併せ考え、現在までの達成度としては、おおむね順調に推移していると判断する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.研究代表者は、今後、英国のDESを紹介し、日本法におけるDESについての示唆を考える研究論文(日本語)と、日本法におけるDESを紹介し、日本法の海外への発信を目的とする論文(英語)の執筆・公表を予定している。 2.研究分担者のうち工藤は、信託の論点に加え、空法専攻者としての強みを活かして航空会社の破綻処理に関する論文を、大久保は、研究代表者との協調の元、DESの課税関係に関する論考を、鬼頭は、仕組債研究者として、不良債権処理にとどまらないDESのあり方を考察する論考を、それぞれ執筆・公表する予定である。 3.そして平成24年度は、上記にあたり、研究の実践への還元を意識し、実務からの知見を吸収すべく、実務家との交流に努めることを予定している。
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Research Products
(27 results)