2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模被害への損害賠償―アメリカ大規模不法行為と証券詐欺の事例を参考に―
Project/Area Number |
22530098
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
楪 博行 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (20331332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 修 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00170093)
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Keywords | 大規模不法行為 / 証券詐欺 / クラスアクション / 損害賠償 |
Research Abstract |
本年度は、アメリカ法における大規模不法行為と証券詐欺にかかる大規模損害の事例を検討することにより、それらの理論的傾向を確認する作業を行った。具体的には、大規模不法行為と証券詐欺の実体法から現れた、我が国に有意と考えられる理論の有効性についての検討を行った。大規模不法行為と証券詐欺に共通するものとしては、1.損害賠償請求権発生の根拠、2.大規模不法行為和解において将来の損害賠償額を同意可能か、3.損害賠償認定のための要素、4.損害発生と因果関係について、以上の各視点から行っている。個別的には、大規模不法行為については損害賠償の救済上の検討、証券詐欺においては私的な訴訟とSECの規制との間の救済上の関連と有効性に関する検討が主となった。この成果は年度内に論文の形式で公表した。 また本年度は、昨年度に実施した研究成果を踏まえ、大規模損害賠償の手段となるクラスアクション、大規模不法行為上の問題、証券詐欺規制の問題の各々について、研究代表者による海外調査を実施した。この海外調査の当初予定は、アメリカ州裁判所と連邦裁判所において、担当裁判官に対して以上の3点のテーマについての聞き取り調査の実施と関連資料収集、およびアメリカ・カナダの研究者との研究会であった。しかし、アメリカの裁判官への聞き取り調査および研究者との研究会も数カ月にわたる電子メールによる方法で完了した。そこで、制度的類似点をもつカナダを媒介に、アメリカでの状況を批判的に検討するために、カナダの資料調査と現地研究者との研究会に絞り、それをMcGill Universityでもった。アメリカの状況をカナダの研究者による第三者的視点から批判検討を行うことができ、その成果は年度内に論文の形式で公表した。したがって、本年度は当初次年度計画であったものを1年前倒しで完了することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度計画が遺漏なく実施されたこと、また、その研究結果についても雑誌論文のうち、遅延のため本年度未公刊分はあるものの、予定以上に公刊されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大規模被害に対する損害賠償について、わが国における状況への提言を行う。過去2年間に行ってきた、アメリカにおける大規模損害に関する知見の深化と比較法的重要点の抽出作業、およびカナダにおける状況分析を踏まえてこれを行う。特に、1.大規模損害賠償請求でのクラスアクションの有用性、2.大規模化による損害賠償基準の変化、3.損害賠償の範囲について、検討を加える予定である。
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Research Products
(4 results)