2012 Fiscal Year Annual Research Report
「公―私」の政策変容におけるアカウンタビリティの理論構築―年金・医療改革を事例に
Project/Area Number |
22530133
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Research Institution | Sakushin Gakuin University |
Principal Investigator |
荒木 宏 作新学院大学, 経営学部, 教授 (50337424)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 政治学 / 政策研究 / アカウンタビリティ / 福祉政策 |
Research Abstract |
本研究は、民営化や政府組織の市場化などの政策変容におけるアカウンタビリティの範囲や実効性について、イギリスの年金改革及び医療改革を事例に、その理論的枠組みを構築することを目的とする。平成24年度は、主として次の3つの計画を実施した。第1の計画は、最近の医療制度改革の資料を収集することである。2010年に誕生した「保守党=自由民主党」の連立政権は、2012年に医療ソーシャル・ケア法を制定し、2013年4月から新たな医療制度を施行した。そこで2006年から始まった保守党独自の医療制度改革の計画案、そして連立政権の制度改革の資料を収集し、比較検討を行った。第2の計画は、年金および医療分野における主要なアクターや団体に質的調査を行うことであったが、現段階では十分な調査結果を得ていない。そのため引き続き質的調査を実施する予定である。第3の計画は、これまでの研究成果の一部をまとめ発表することである。年金政策を事例にその政策変容におけるアカウンタビリティについて論文を作成し学会で発表を行った。1980年代、保守党政権は公的年金の縮小に対する私的年金の拡充という年金制度改革を実施したが、90年代に入り予期せぬ新たな3つの問題が露呈した。年金は、戦後一貫した重要な政治的イシューであり、それゆえ各政党は制度改革におけるアカウンタビリティの有用性や明瞭性を高めなければならない。保守党は規制緩和政策を通じての制度改革(「リスクの個人化(転嫁)」)を、労働党は「大蔵省=金融サービス機構」体制による制度改革(「リスクの共有化」)をそれぞれ行ったが、この政党間の制度設計の相違は、「公―私」の政策変容における政党間のアカウンタビリティの有効性や明瞭性の相違を意味しており、アカウンタビリティの有用性や明瞭性を高めることが、いかにイギリス政治(特に政党政治)の動向に大きく影響しているかを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、英国の年金及び医療政策分野を事例にアカウンタビリティの理論を構築することを目的とする。事例研究の1つである医療制度において、2010年に成立した保守党=自由民主党の連立政権は、医療制度が誕生してから63年ぶりの大規模な制度改革といわれる医療制度改革を実施し、2013年4月から新たな体制による医療制度が始まった。そのため、保守党の医療政策と連立政権における改革との連続性あるいは断続性を知る必要から、資料を収集しその分析を行っている。そしてこの分析をもとに、質的調査を実施する予定である。 またこれまでの研究成果の1部を学会で発表し、その報告論文を研究論文として公表する予定であったが、理論的枠組みの構築にはまだ至っていないため、現在論文を作成している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
事例研究の1つである医療制度の最近の制度改革について調査し資料を収集するとともに、現地にて質的調査を実施する。これまで収集したアカウンタビリティの理論に関する論文を整理し、本研究のテーマである「公―私」の政策変容(たとえば民営化や市場化(準市場化)という政策変容)におけるアカウンタビリティ理論の再構築について、まず、年金制度改革を事例とした政治的アカウンタビリティの論文を作成し公表する。そして医療制度の事例研究を整理したのち、年金と医療それぞれ異なる政策分野における政策変容を比較検討し、アカウンタビリティの理論的枠組みの構築を試み、その研究成果を口頭発表や研究論文等で公表する予定である。
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Research Products
(1 results)