2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 貢 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70251311)
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Keywords | 崩壊国家 / ディアスポラ / 国家建設 |
Research Abstract |
平成23年度は、研究代表者が、関連文献の精査と、資料のデータをまとめる作業を実施した。そこでは、これまで収集している資料・文献、さらには今後収集対象となる資料の範囲の確定を行ってきた。本研究が主に対象とするソマリアや「ソマリランド」の「ディアスポラ」に関わる研究に限定せず、他の地域においてもみられるディアスポラと本国の政治・経済関係を広くサーヴェイする作業を実施した。 また、今年度当初はヨーロッパでの調査を予定していたが、他の研究プロジェクトにおいて本研究で予定していた英国における調査を実施する機会を得たので、時間の制約もあり、8月に2週間にわたり、ヨーロッパ最大のソマリ人コミュニティーが存在するロンドン聞き取り調査や資料収集を実施した。 この調査研究の成果の一部は、平成23年年度公刊された複数の論文集に掲載されたほか、複数の学会の研究大会で報告を行う機会を得ることができたほか、海外においても関連テーマにかんする講演を実施した。そこに見え隠れするのは、「ディアスポラ」の様々な関与のあり方が、ソマリアにおける国家形成においてきわめて両義的な役割になっている点である。つまり、経済的な関与は、ソマリア国内での政経の上できわめて重要である一方、それが同時に「紛争経済」、特に交際安全保障上大きな脅威となっているソマリア沖「海賊」の活動持続にもつながる点、そして政治的な関与は、支援する欧米諸国との連関では評価されているものの、国内における正統性を十分に樹立できにくい状況が生まれているということである。2012年は、暫定政府の期間満了ともなりソマリアにおける長期の安定を考える上で一つの試金石という意味を持つ可能性が高いことから、引き続き政治。経済などの領域でのディアスポラの動きを注視していく必要がある。本研究は国際的にも大きな関心事項となってきたソマリア問題への政策対応上も一定の方向性を見いだす研究という意義や重要性も有していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に成果の一部を研究発表(口頭)の形、あるいは論文として発表してきており、おおむね順調に進展していると判断している。ソマリアという事例が、他地域の「ディアスポラ」との比較の中には位置づけにくい特徴を有していることから、比較研究という観点からは十分では内面が残るものの、独自の行動準則の下で興味深い動きをしていることは観察されており、今後その成果にかんしても報告していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては文献研究に加え、海外調査を予定してきたが、幸運にも他の研究プロジェクトにおいて海外調査を実施する機会を得ることができてきたため、非常に充実して研究成果につながっている。海外でのディアスポラとの関係構築も順調であり、MLを通した多数の情報に接する機会に恵まれている。こうした形で得られるソースを用いて、ソマリアのディアスポラが本国の国家再建にいかに関わっているかにかんする多面性を引き続き明らかにしていく予定である。
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