2010 Fiscal Year Annual Research Report
世界銀行の査閲(インスペクション)パネルとグローバル・ガバナンス
Project/Area Number |
22530171
|
Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
段 家誠 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (20340846)
|
Keywords | 世界銀行 / NGO / 査閲(インスペクション)・パネル / グローバル・ガバナンス / 国際援助論 / 国際レジーム / アカウンタビリティー / カンボジア:ネパール |
Research Abstract |
本研究は世界銀行(以下、世銀)の正統性と国際開発援助レジームにおける影響力を、世銀の査閲(インスペクション)・パネルの事例を研究することによって明らかにしようとするものである。その際パネル対象事例を現地調査するとともに、非政府組織(NGOs)の役割や影響力を調べること、そして世銀組織内部の意思決定過程へのパネルとNGOsの活動がどのような影響を与えたかどうかについて検討すること、さらに世銀内部の規範形成が国際開発援助のレジームにどのような影響を与えたかどうかについて研究することが目的である。 本年度は、パネル対象事例となった「カンボジア土地管理運営プロジェクト(Cambodia Land Management and Administration Project, LMAP)」と「ネパール・アルン3・ダム計画」について現地調査を実施した。カンボジア土地管理プロジェクト現地調査では、首都プノンペンのボンコック湖開発に伴う移住対象地と移転先4か所について訪問調査した。うち2か所の移住先では上下水道整備が十分ではないこと、首都への交通アクセスが不便であること等から移住対象者の不満がみられた。調査過程ではカンボジアの政治・経済・社会の現状について、経済成長が進むなかポルポト大虐殺の記憶の整理をまだ十分につけられない人々が多くいることを知った。また中国の政府開発援助(ODA)の存在感がわかった。「ネパール・アルン3・ダム計画」現地調査では、世銀パネルの第1号案件でパネル調査がきっかけで計画が中止となったプロジェクト・サイトを訪問した。ネパール東部のアルン渓谷流域へは延べ3日かけて山中を移動した。計画では氷河湖の決壊時のダム安全性と森林生態系への悪影響、同国経済へのダム建設費の負担等が議論された上で中止となった同プロジェクトの中止理由を垣間見ることができた。一方、ネパールへのインドと中国の政治経済への影響力の強さを実感した。また首都の電力不足に関して周辺ダムを調査した。
|