2011 Fiscal Year Annual Research Report
世界銀行の査閲(インスペクション)パネルとグローバル・ガバナンス
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22530171
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
段 家誠 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (20340846)
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Keywords | 世界銀行 / NGO / 査閲(インスペクション)・パネル / グローバル・ガバナンス / 市民社会 / 国際レジーム / アカウンタビリティー / アルバニア |
Research Abstract |
本研究は、世界銀行(以下、世銀)の正統性と国際開発レジームにおける影響力を、世銀の査閲(インスペクション)・パネルの事例を研究することによって明らかにしようとするものである。そのために、パネルの調査対象となって事例を現地調査し、当該国の市民社会の現状を俯瞰しつつ、プロジェクトにおける非政府組織(NGOs)等の役割や影響力を調べる。さらに世銀組織内部での意思決定過程において、パネルとNGOsの活動がどのような役割を与えたかを検討する。そこから世銀組織内部でどのようにして開発援助に関する規範が形成され、それらが国際レジームにどのような影響をもたらしたかをみる。以上が研究目的である。 平成23年度は、パネル対象事例となった「アルバニア発電セクター再構築プロジェクト(Albania: Power Sector Generation and Restructuring Project)」について現地調査を行った。欧州で最も貧しいと言われている農業国アルバニアではこれまで水力発電が主体であったが、近年火力発電所が建設された。地中海のブロラ(Vlora)湾に建設された火力発電所は、海洋汚染や周辺環境、ツーリズムへの影響が懸念されたことから、市民からパネルへの申し立てが行われた。冷戦崩壊まで社会主義政権の下で鎖国されたアルバニアは、90年代急速な市場経済を導入したが、90年代末に大規模なネズミ講が破綻して、国内経済と政情が不安定となった。最近はユーロ加盟を目指しているが、国内では若年層を中心に高い失業率と物価高が国民生活を圧迫している。これまで査閲パネル対象プロジェクトの多くがアフリカやアジア、中南米の開発途上国であったが、東欧アルバニアではアフリカやアジア、南米等における途上国とは異なる歴史、文化、発展状況下で電力事情とツーリズム、ユーロ加盟による経済成長が関係する事例であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年を通じた研究実施計画を基に、プロジェクト・サイクルを構築して実施した結果、おおむね計画通りに研究が進展している。これまでの科学研究費補助金研究の経験から4-7月を文献収集と分析、調査対象地選定にあて、8月から9月もしくは2月から3月に現地調査を行っている。平成23年度は東日本大震災後の影響で、予算の振込が2回に分けられたこともあり、当初予定していた8月の調査を3月に変更した。また調査対象地も当初はカザフスタンであったが3月は寒冷地につき道路凍結等による危険を回避するため、調査対象地をアルバニアに変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究課題のまとめとなる最終年度である。いままでの研究成果を踏まえて、調査対象地とインタビュー対象をしぼりたい。具体的には、カザフスタン共和国における現地調査とその他一カ所の調査を、安全情報を考慮した上で検討している。これまで蓄積したデータを講義、講演会、研究会、学会報告、論文、著書等で積極的に社会還元したい。アルバニアとカザフスタンについては、NGOsならびに市民社会組織の活動状況が、日本からでは見えにくいので、データベースやインターネット、国連関係者等を通じて現地情報を入手し調査に役立てたい。
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