2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530274
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
白石 小百合 横浜市立大学, 国際総合科学部, 教授 (70441417)
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス / 幸福度 / プロセスの効用 / 効用の予測ミス / 本質的な属性 / 外面的な属性 |
Research Abstract |
本研究は、幸福度の高い社会の構築との問題意識から、まず、人々の幸福に対するとらえ方を定量的に把握するとともに、人々の幸福度とワーク・ライフ・バランスとの関係を解明すべく、マイクロデータを用いた実証分析を行う。具体的には、主観的な幸福感に着目し、就業の状況、家庭での時間の過ごし方、子どもや介護等の家族形態等の個人的属性から職場と家庭における人々の行動を観察する。そして就業と家庭における時間の過ごし方が人々の主観的な幸福感に与える影響を実証的に明らかにすることにより、近年注目されるワーク・ライフ・バランスのあり方とその効果的な施策について検討を行うことを目的とする。平成23年度は、22年度に引き続き予備的考察を行うとともに、本研究課題の視点を広げるため幸福度に関する書籍の翻訳作業を行った。具体的には以下のとおりである。 (1)文献調査 女性のワーク・ライフ・バランスと幸福度に関する文献調査を継続して行った。Journal of Happiness Studiesなどの専門誌をサーベイするとともに、NBER Working Papersなどのワーキングペーパーもチェックし、最新の研究動向を把握した。 (2)Bruno S. Frey[2008], Happiness: A Revolution in Economics (Munich Lectures in Economics),The MIT Pressの翻訳作業を行った。同書は、実証分析により、人々の幸福感の要因分析を行っている。特に、結婚と幸福度との関係について因果関係を制御する方法を提案している点、また、プロセスの効用という視点から、直接的な政治参加と就業形態の選択が幸福感を高める効果を分析している点が、本研究課題を進める上で大変参考になった。 (3)本年度も内閣府と荒川区の研究会に参加し、現実の政策と幸福度に関する関係性についての議論等を行うことで、自らの研究課題へのフィードバックを行うとともに、他大学の研究者との研究交流を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を進めていく上で、ミクロ計量経済学による幸福度の関数を単に推定することに疑問を持ち、研究の視野を広げるため、B.Frey[2008],Happinessの翻訳を行ったことが最大の成果である。特に、同書はプロセスの効用(標準的な経済学が想定しているように人々は結果からのみ効用を得ている以外にも、結果に至るプロセスからも効用を得ている)に着目しており、本研究課題でも、プロセスに関連した要因の検討をするべきであるとの結論を得た。なお、同書は、平成24年秋に、NTT出版社から刊行される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度については、女性の幸福感に関する実証分析を深めていきたい。特に、家計経済研究所のパネル調査を用いて、結婚・出産というイベントに伴う幸福感の推移に着目した分析を行いたい。また、当初計画にあるとおり、男性が家事育児を行うことにより得られる幸福度の有無と限界効果を計算したい。
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