2011 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化ガス削減政策のための産業連関表分析とマクロ計量経済モデル
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22530291
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
西村 和志 追手門学院大学, 経済学部, 教授 (70148485)
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Keywords | 経済政策 / 環境政策 / 再生可能エネルギー / 地球温暖化ガス排出削減 / リモートセンシング |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき、本年度は金融システムのある開放マクロ経済モデル(2011)について、為替レートの合理的予想形成により長期均衡へ移行するドーンブッシュ・マクロモデルを参考に、合理的期待形成の代わりに先物市場価格を導入して、動学化することを研究した。一方、CGEモデルと同様な一時的一般均衡モデルを確率過程で動学化することを研究した。また、地域開放マクロ計量経済モデルは、稲田義久・小川義仁(1994)の近畿経済計量モデル、井田憲計の大阪府立産業開発研究所「大阪府マクロ計量モデル」Ver.HR(2005.1.17)および関西社会経済研究所「関西マクロ計量モデル」を検討したが、これらは地域産業連関表を伴うフロー型モデルであり、ストック構造がないために、中・長期シミュレーションには向かない。しかし、短期分析のために、「大阪府マクロ計量モデル」に、石村貞夫他(2009)環境分析用産業連関計算などを参考に、各部門のCO2排出量と太陽光発電による削減量を計算することを試作した。大阪市および堺市における、太陽光発電の実施率と可能性率を実地推計するために、東淀川区の航空写真と、同地区のゼンリン地図のプリントに評価をチェックする作業の「太陽光発電の調査マニュアル」を作成し、研究協力者である演習生に説明し、調査結果を得た。さらに調査効率を上げるために、リモートセンシングにより、PhotshopCS3で航空写真と住宅地図を重ね合わせ調査方法を試作した。現状では、両市とも中高層集合住宅、オフィスビル、商業施設などで占められ、太陽光発電設置が困難であるから、各ビルの内部エネルギー情報を、「平成17年国勢調査大阪府小地域集計」からの居住者・住宅情報と、ゼンリン住宅地図からの個別情報に基づく、ビル内部の省エネ化を推計した。びわ湖環境ビジネスメッセ2011、太陽光パネル設置工事会社、三菱自動車水島、東京エコプロダクト2011を見学し、PV,LED,リチュウム電池、EVの情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の遅れの要因としては3点上げられる。 まず、戸建ての太陽光パネル設置可能性についてはデータは取りやすいが、中高層、商業ビル、オフィスビルは屋上の利用可能性と面積による発電量に制約があり、設置困難と判定される。設置困難な建物は建物内部のエネルギー消費を技術代替的方法、運用による節電、LED,ヒートポンプ給湯、エアコンによってのCO2削減することが考えられる。削減量は、居住者数や各業種別のエネルギー消費量の内部情報にもとづき推計すると、より現状に近い推計ができる。その推計方法を平成23年度までの茨木市商業地域をモデルに検討したが、大阪市での適用が遅れた。中長期マクロ計量経済モデルについては、ストック変数の需給均衡式が必要であり、トービン資産市場モデルを「大阪府マクロ計量モデル」に接続し、大阪府フロー・ストック計量経済モデルを作成することができなかった。本研究に関係する政府・地方自治体の環境政策は、太陽光発電設置の補助金制度、関西電力の太陽光発電の余剰電力買い取り制度だったが、再生可能エネルギー・買い取り制度が加わり、政策に追加された。原発事故以来、国のエネルギー基本計画は、中長期温暖化ガス削減目標とエネルギー構成割合について決定されないままであり、政府、関西電力、原発立地自治体、周辺自治体の原発への対策を新聞・雑誌・提案書で情報を収集した。関西電力の原発停止とともに、関西電力の原子力依存度の減少を望む住民が増加している。これらの理由で大阪府の中長期エネルギー需給見込みに対する、シミュレーション・シナリオが描けなかった。今年度は、国の基本計画、関西電力の中長期経営計画、大阪府の原子力発電への基本的な考え、周辺自治体の方向性が決定され、シミュレーション目標値を決定できる。
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Strategy for Future Research Activity |
短期分析のために、「大阪府マクロ計量モデル」に大阪府産業連関表を接続し、各部門のCO2排出量と太陽光発電による削減量を計算する枠組みを完成させ、研究を推進する。中長期モデルは、ストック方程式を追加する大阪府フロー・ストック計量経済モデルを作成する。大阪府ではエネルギー資源がほとんどなく、もし関西電力管内において脱原発が政治的に決定されれば、再生可能エネルギーは太陽光以外有望なものは大阪府にはない。中長期削減目標は都市部に省エネシステムを構築して、省エネ、エネルギー効率を上げ、天然ガスを使用し、周辺ベッドタウンでは、太陽光・太陽熱を利用することにより、数値目標を具体的に達成するシミュレーション・シナリオを設定し、大阪府フロー・ストック計量経済モデルで、実現可能かを推計する。
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