2011 Fiscal Year Annual Research Report
日銀の市場との対話と金融政策運営・金融市場の反応に関する研究
Project/Area Number |
22530305
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 隆康 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60361888)
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Keywords | 金融論 / 中央銀行 / 市場との対話 / 金融政策 / 金融市場 |
Research Abstract |
今年度の目的は以下の2点であった。(1)東日本大震災の際における日銀の市場との対話と流動性の供給について検証する。(2)市場の金融政策に関する予想が変化した時に、市場金利や為替レート、株価、商品先物などがどのように反応したのかを中心に研究をすすめる。研究の展開次第では、同様な分析を米、ユーロ圏、英、豪などにも拡大して、比較することも検討する。 まず、東日本震災後における日銀の市場との対話や流動性供給策、金融緩和策の強化が短期金融市場と国債市場に与えた影響を検証した。日銀による積極的な情報発信や流動性供給、金融緩和策の強化などにより、短期金融市場と日本国債市場は混乱なく安定的に推移した。また、こうした短期金融市場の混乱なき推移が、現金の円滑な供給から日銀ネットなどの決済システムの運行にとって必要不可欠であった。 次に、オーストラリアにおいて市場の金融政策に関する予想が変化した時に、中長期金利がどのように推移したのかを検証した。金融政策の予想と2年物、3年物、5年物、10年物の国債は1対1の関係にはないが、中長期的にはかい離せずに推移していることがわかった。このことからオーストラリアの中央銀行であるRBAは、金融政策の先行き予想を変化させることによって、10年物までの国債の利回りに部分的な影響を与えることが可能であるといえる。 最後に、世界金融危機の期間における標本を用いて、米国についてもオーストラリアと同様な分析を行った。金融市場の混乱を背景に、金融政策に関する期待は、2年物、5年物、10年物の国債利回りや金利スワップレートには影響を及ぼさなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
22年度は、(1)08年10月から12月のリーマンショック後の金融緩和において、日銀の市場との対話が金融市場に与えた影響を検証する、(2)10年10月の包括緩和政策に関して、日銀の市場に対する情報発信と金融市場に与えた短期的な効果を検証する--の2点から研究を実施した。 23年度は、(1)東日本大震災の際における日銀の市場との対話と流動性の供給について検証する。(2)市場の金融政策に関する予想が変化した時に、市場金利や為替レート、株価、商品先物などがどのように反応したのかを中心に研究をすすめる。研究の展開次第では、同様な分析を米、ユーロ圏、英、豪などにも拡大して、比較することも検討する--の2点から研究を実施した。23年度の研究終了が半年程度遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、日銀が13年1月に導入したインフレ目標の効果も含めて、市場との対話とREIT市場を分析している。日銀の金融政策が大きく転換したため、研究期間を半年間延長した。 残された課題には(1)黒田日銀総裁と白川前日銀総裁に関して、市場との対話と金融市場の反応を比較分析する。(2)標本を世界金融危機以前と以後に分割し、日銀の市場との対話の違いが金融市場に影響を与えたのか否かを分析する。(3)円高局面と長期金利上昇時局面における日銀の市場との対話を分析する。
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Research Products
(8 results)